治療・予防

肝臓病は飲酒に要注意
~症状に応じた食事を(虎の門病院 土井悦子部長)~

 新型コロナウイルス禍で在宅勤務が増え、通勤などに伴う運動量が減少し、肥満になった人が多いという。そのため肝臓に脂肪が付いて働きが悪くなる人も増えている。肝臓病の食事について、虎の門病院(東京都港区)栄養部の土井悦子部長に話を聞いた。

肝臓病の食事は状態に応じて

肝臓病の食事は状態に応じて

 ◇沈黙の臓器

 肝臓には、体に必要なタンパク質の合成、栄養素の貯蔵、体に有害な物質の分解(解毒)、食べ物を消化するときの消化酵素の分泌など、さまざまな働きがある。

 「肝細胞や組織に異常があると、疲れやすさや食欲不振を感じる方もいますが、大半は自覚症状がほとんどありません」。肝臓は「沈黙」の臓器とも呼ばれ、気付かぬうちに病状が進行してしまうことも。重症になると黄疸(おうだん)や、おなかに水がたまる腹水という症状が出るリスクが高まる。

 食事内容は状態に応じて

 肝臓病には、ウイルス性、アルコール性、自己免疫性、肥満脂肪肝による肝炎があり、進行すると肝硬変肝がんになることもある。

 長期にわたり大量に飲酒することで、肝臓に負担がかかり、腹痛や発熱、だるさなどの症状が出る。「アルコール性肝炎」と診断されたら、すぐに禁酒を。

 「肝臓病を予防するお酒の量は明らかではありませんが、1日にビールなら500ミリリットル、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯までにし、週2日以上の休肝日を設けることをお勧めします」

 食事療法は肝臓の状態による。「基本的にバランスのよい食事で構いませんが、血圧が高い場合や浮腫や腹水がある場合は減塩が必要です。鉄分が肝臓に蓄積されると肝臓の細胞が傷みやすくなるので、医師から鉄の制限を指示されることもあります」

 肝硬変になると、肝臓内への血液循環がうまくいかなくなる影響で、食道の血管がこぶのように腫れる場合がある。こぶが破れると大出血することもあるため、刺激となる酸味や辛味の強い食品、煎餅などの硬いものを避け、軟らかい食品をよくかんで食べるのがポイント。

 ただ、肝臓の糖質を貯蔵する力が弱くなると、夕食から翌朝食までの間に体が飢餓状態となって栄養状態が悪くなる。寝る前に200キロカロリー程度の夜食を取った方がいい場合もある。

 肥満による脂肪肝については、食事を減らして痩せるだけでは不十分という。「意識して散歩に行ったり、30~40分に1回は立ち上がって動くようにしたり、長時間じっとしないよう心掛けるとよいでしょう」と土井部長はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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