慢性肝炎〔まんせいかんえん〕

 慢性的に肝臓に炎症が存在する状態であり、6カ月以上にわたって肝障害がみとめられる場合を慢性肝炎といいます。肝臓に炎症が生じ肝細胞が破壊されると、その部分を修復するために、肝細胞の再生と線維の増生が起こりますが、これが慢性的に続くことによって肝硬変へと進展することになります。

[原因]
 肝炎ウイルス、アルコール、薬剤などによるもののほか、体内に侵入した異物に対してそれを排除するために反応する免疫系が、自分のからだに対して反応してしまう自己免疫の結果、肝障害が生じる「自己免疫性肝炎」などがあります。そのなかでもっとも患者数が多く重要なのが「ウイルス性慢性肝炎」です。
 慢性肝炎を生じるウイルスはB型およびC型肝炎ウイルスであり、ともに血液、体液を介して感染します。
 ここでは、ウイルス性のものについての解説をし、その他の原因については他項に譲ります。

■B型肝炎ウイルス
 B型肝炎ウイルスが持続感染している人(HBキャリア)の一部に、慢性肝炎が生じます。HBキャリアは、B型肝炎ウイルスのいわゆる保菌者であり、肝障害をみとめない無症候性キャリアから慢性肝炎や肝硬変をみとめる人までさまざまな状態を示します。急性肝炎の項で述べたように、B型肝炎ウイルスは免疫機能が正常な成人に感染した場合は、ウイルスは攻撃を受け排除されてしまうため、一過性感染で終了します(B型急性肝炎)。
 この際、ウイルスがすみついた肝細胞も同時に破壊される急性肝炎が生じます。しかし、免疫機能が弱い人に感染した場合は、ウイルスに対する十分な攻撃が起こらないためウイルスは肝臓にすみついてしまいます。これをキャリア化といいます。
 キャリア化しやすい人としては、3歳以下の幼児、血液透析患者、エイズ患者や免疫抑制薬の投与を受けている人などがありますが、HBキャリアの圧倒的多数は幼児期における感染、特にHBキャリアである母親から子どもへの出産時の感染によって成立します。母親がHBe抗体陽性の場合は、子どもがキャリア化することはまれですが、HBe抗原陽性の場合は、80~90%と高率に子どものキャリア化が生じます。
 幼児期にキャリア化した人は体内にウイルスがいるものの、免疫系による攻撃が起こらずに肝障害もなく無症候性キャリアとして過ごします。その後、多くの人では、10~30歳代にウイルスに対する攻撃が開始され、同時に肝細胞も破壊されるため肝炎の時期が到来します。数カ月から数年にわたる肝炎期のあと、大部分の人ではウイルス量は減少しHBe抗体陽性の無症候性キャリアとして一生を過ごします。
 また、一部の人では、ウイルスが消失しキャリアの状態から離脱することができます。その半面、約10%のキャリアでは肝炎が持続し慢性肝炎へ移行します。慢性肝炎では急激に重症化して肝不全になる人もいれば、10年以上かけてゆっくり肝硬変に進行する人、4~5年という比較的短期間で肝硬変になる人、慢性肝炎からいきなり肝がんになる人など経過はさまざまです。

■C型肝炎ウイルス
 C型肝炎ウイルスの持続感染者(HCキャリア)に慢性肝炎が生じます。B型ウイルス同様、血液、体液を介して感染するため、血液製剤の使用、血液が付着した医療器具の使用、性行為、出産時の母子間などの感染経路があり得ます。性行為や出産時の感染は低率であると考えられ、C型ウイルス感染の多くは、輸血もしくは医療器具を介しての感染が原因と想定されています。しかし、C型ウイルスに関する知見の進歩や普及に伴い、現在ではこれらによる感染はほとんどなくなっていると考えられます。
 ウイルスに感染すると、急性肝炎を生じますが、C型では肝障害や症状は軽いものも多く、急性肝炎の時期がはっきりしない場合もあります。B型と異なり、免疫機能の正常な成人に感染した場合でも、高率にキャリア化してしまいます。HCキャリアの診断にはHCV抗体を測定します。HCV抗体は、C型ウイルスが体内に侵入したことを示すマーカーであり、現在はウイルスが排除されている人でも陽性となり得ます(C型急性肝炎)。
 したがって、HCキャリアの正確な診断には、ウイルス遺伝子であるHCV-RNAの測定が必要であり、これが陽性であれば、現在ウイルスが存在しキャリアであることを意味します。
 献血者における検査では、HCV抗体陽性者の約80%がHCV-RNA陽性となり、HCキャリアであると判明しています。
 また、C型ウイルスの存在があきらかになったのは、1989年のことでありHCキャリアの自然経過については不明な点も多く、肝障害のない無症候性HCキャリアであっても今後、慢性肝炎が生じてくる可能性があり、経過観察が必要と考えられます。

[症状]
 原則として症状はありません。検診などで偶然、肝障害が発見されて通院をはじめる人が多くを占めます。診察上も異常を発見できることは少なく、腹部触診で肝臓を触れるくらいです。
 したがって、肝炎の状態を把握するには、血液検査に頼ることになります。ただし、時に急激に悪化し、黄疸(おうだん)や全身倦怠(けんたい)感など急性肝炎様の症状を示すこともあります。

[診断]
 肝障害の存在と、それぞれのウイルスマーカーが陽性であること、ほかに肝障害の原因がないことによって診断されます。

[治療]
 日常生活上、特別に注意することはありません。まず、食事はアルコールを除けば特に制限の必要はなく、高たんぱく、高ビタミンのものを多くとるように心掛けます。
 また、運動については制限することが必要と考えられていた時期もありましたが、現在はとてもハードなもの以外は制限不要と考えられています。ただし、肝炎が急性増悪(ぞうあく)しているときは入院などによる安静が必要になることもあります。
 B型もC型もウイルスが原因であり、根本的に治療するにはウイルスを退治する必要があります。
 当初、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症の治療薬として開発されたラミブジンは、B型肝炎ウイルスに対しても逆転写酵素を阻害し、また基質としてウイルスDNAに取り込まれ、B型肝炎ウイルスDNAの伸長をとめるという2つの作用によってウイルス増殖を強力に抑制します。
 インターフェロンは白血球や線維芽細胞がつくる物質で、ウイルスの増殖抑制作用をもち、これを注射で大量に投与することで肝炎ウイルスに対する効果を期待する治療法です。C型肝炎ウイルスに対するインターフェロン投与による治療法では完全治癒、すなわち、血中からC型肝炎ウイルスがいなくなり、ALT(GPT)が永続的に正常化し、かつ肝臓の組織が改善する状態が期待されます。現在までの報告によると、少なくともインターフェロンによりC型肝炎ウイルスが消失した症例では肝がんの発生は抑制されていると考えられ、またウイルスが完全には消失しなくても、インターフェロン投与中にトランスアミナーゼが正常化すれば、その後に再燃(症状がおさまっていた病気が再び悪化したり、発症すること)した症例でも肝がん発生が抑制されている可能性が示唆されています。さらに、ウイルスが除去できない症例では強力ネオミノファーゲンCやウルソデオキシコール酸(ウルソ)などを投与することで持続的にトランスアミナーゼを低値に保つことができ、肝がんの発生を抑制することが報告されています。
 インターフェロン療法は、B型肝炎では1カ月間、C型肝炎では最長6カ月間のインターフェロンの使用がみとめられています。また、インターフェロンには発熱、白血球減少、腎障害、肺障害、脱毛などさまざまな合併症があり注意が必要です。
 おもにインターフェロンとの併用療法で使用される抗ウイルス薬であるリバビリンは、インターフェロン単独では効きにくい患者に有効なだけでなく、インターフェロンが効く患者にもウイルス量の多さと関係なく30%ほどの有効率を上げていると報告されています。
 また最近では、インターフェロンと併用しないC型肝炎の経口抗ウイルス薬が保険適用となり、既存の治療法が効かなかった人に対して有効率がきわめて高いと報告されています。問題は薬の価格が高いことです。
 そのほか、肝臓の炎症を抑制する効果をもつ薬は存在しますが、いずれも抗ウイルス効果はもたず、補助療法として使用されます。
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