転倒・骨折〔てんとう・こっせつ〕
骨折は寝たきりの原因疾患の3番目であり、骨折の90%は転倒が原因です。60歳代では手くびの骨折(コーレス骨折)、70歳代では脊椎圧迫骨折、80歳代以降では大腿骨頸部(だいたいこつけいぶ)骨折がふえます。
脊椎圧迫骨折は自分の体重を骨が支えきれなくなって起こる「非外傷性骨折」で、いつの間にか起きていることがありますが、しりもちをついたときなどに起こることも少なくありません。
転倒時の転びかたで、かばい手をつくことができる反射神経をもっている年齢では手くびを、高齢者で斜めうしろにかばうことができずに転んでしまうと、大腿骨頸部骨折が起こります。
■骨折の予防
30歳代をピークとする骨の量を高齢期においても維持すれば骨折は半減しますが、実情は70歳代でピークの20%以上は減少します。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療がいきとどくこと(現状で治療は骨粗鬆症患者の20%程度)が求められています。しかし、転倒を防ぐことはそれ以上に重要で、かつ有効です。
高齢者では、1年間で5人に1人以上転倒します。転倒した人の20人に1人以上は骨折します。転倒を予防するためには3つの大きな注意点があります。
①自己の筋力、歩行能力、バランス能力を知る
②ふらつきに関連する薬をのんでいるか知る
③転びやすい物やつまずきやすい環境を知る
これは、転倒危険因子を理解することにほかなりません。
■転倒危険因子の理解
転倒の危険因子は身体的要因(内的因子)と環境要因(外的因子)があります。内的因子は、歩行機能に関連するバランス、筋力や立位や歩行に影響する疾患、症状、薬剤に大別されます。外的因子は、段差、障害物、階段、坂といった普遍的な要素と床やはき物といった個別の要素に分けられます。転倒者と非転倒者をくらべると内的因子がずっと重要なことがわかります。
※(3)~(22) までに該当項目が10項目以上あると転倒危険
家庭で簡単に自分の危険度を知るためには、簡易式評価を用います。
※7点以上は「要注意」
■転倒の予防
転倒の予防には次の4つがあげられます。
①家庭環境の改善:つまずきやすいものを片付ける(整頓)、LEDなど明るい照明にする
②運動:散歩やストレッチなどを週に2回以上、1回30分程度の運動をおこなう
③食事:肉など、たんぱく質を豊富にとる
④はき物:つま先が反り上がったものをはく、スリッパは禁止
(執筆・監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 理事長/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐 鳥羽 研二)
脊椎圧迫骨折は自分の体重を骨が支えきれなくなって起こる「非外傷性骨折」で、いつの間にか起きていることがありますが、しりもちをついたときなどに起こることも少なくありません。
転倒時の転びかたで、かばい手をつくことができる反射神経をもっている年齢では手くびを、高齢者で斜めうしろにかばうことができずに転んでしまうと、大腿骨頸部骨折が起こります。
■骨折の予防
30歳代をピークとする骨の量を高齢期においても維持すれば骨折は半減しますが、実情は70歳代でピークの20%以上は減少します。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療がいきとどくこと(現状で治療は骨粗鬆症患者の20%程度)が求められています。しかし、転倒を防ぐことはそれ以上に重要で、かつ有効です。
高齢者では、1年間で5人に1人以上転倒します。転倒した人の20人に1人以上は骨折します。転倒を予防するためには3つの大きな注意点があります。
①自己の筋力、歩行能力、バランス能力を知る
②ふらつきに関連する薬をのんでいるか知る
③転びやすい物やつまずきやすい環境を知る
これは、転倒危険因子を理解することにほかなりません。
■転倒危険因子の理解
転倒の危険因子は身体的要因(内的因子)と環境要因(外的因子)があります。内的因子は、歩行機能に関連するバランス、筋力や立位や歩行に影響する疾患、症状、薬剤に大別されます。外的因子は、段差、障害物、階段、坂といった普遍的な要素と床やはき物といった個別の要素に分けられます。転倒者と非転倒者をくらべると内的因子がずっと重要なことがわかります。
(1) 転倒:回答数2395名のうち708例(4.7±1.0回/年) 28.8% | ||||
全体 (%) | 非転倒者 (%) | 転倒者 (%) | 有意差 (p) | |
(2) つまずくことがある | 56.5 | 45.3 | 83.3 | <0.0001 |
(3) 手すりにつかまらずに階段の上り下りができない | 50.6 | 45.0 | 63.8 | <0.0001 |
(4) 歩く速度が遅くなってきた | 65.2 | 59.2 | 79.6 | <0.0001 |
(5) 横断歩道を青のうちにわたりきれない | 17.0 | 12.7 | 27.5 | <0.0001 |
(6) 1キロメートルくらい続けて歩けない | 35.8 | 30.5 | 48.5 | <0.0001 |
(7) 片足で5秒くらい立てない | 38.6 | 32.5 | 53.2 | <0.0001 |
(8) 杖を使っている | 28.3 | 22.0 | 43.7 | <0.0001 |
(9) タオルを固く絞れない | 16.8 | 12.2 | 28.2 | <0.0001 |
(10) めまい、ふらつきがある | 32.4 | 24.7 | 50.6 | <0.0001 |
(11) 背中が丸くなってきた | 44.9 | 40.3 | 55.8 | <0.0001 |
(12) 膝が痛む | 47.3 | 41.1 | 62.3 | <0.0001 |
(13) 目がみにくい | 53.1 | 48.4 | 64.3 | <0.0001 |
(14) 耳が聞こえにくい | 42.5 | 39.1 | 50.7 | <0.0001 |
(15) もの忘れが気になる | 63.7 | 59.4 | 74.0 | <0.0001 |
(16) 転ばないかと不安になる | 45.8 | 37.0 | 64.8 | <0.0001 |
(17) 毎日お薬を5種類以上のんでいる | 31.2 | 27.2 | 40.8 | <0.0001 |
(18) 家の中で歩くとき暗く感ずる | 11.4 | 8.5 | 18.3 | <0.0001 |
(19) 廊下、居間、玄関に障害物 | 20.8 | 17.1 | 29.6 | <0.0001 |
(20) 家の中に段差がある | 69.1 | 68.9 | 69.5 | 0.79(ns) |
(21) 階段を使わなくてはならない | 27.7 | 27.5 | 28.2 | 0.74(ns) |
(22) 生活上家の近くの急な坂道を歩く | 33.3 | 33.6 | 32.5 | 0.60(ns) |
家庭で簡単に自分の危険度を知るためには、簡易式評価を用います。
□ 過去1年に転んだことがある | 5点 |
□ 背中が丸くなってきた | 2点 |
□ 歩く速度が遅くなってきたと思う | 2点 |
□ 杖を使っている | 2点 |
□ 毎日5種類以上の薬をのんでいる | 2点 |
合 計 | 点 |
■転倒の予防
転倒の予防には次の4つがあげられます。
①家庭環境の改善:つまずきやすいものを片付ける(整頓)、LEDなど明るい照明にする
②運動:散歩やストレッチなどを週に2回以上、1回30分程度の運動をおこなう
③食事:肉など、たんぱく質を豊富にとる
④はき物:つま先が反り上がったものをはく、スリッパは禁止
(執筆・監修:地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 理事長/国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐 鳥羽 研二)