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人間の皮膚には、常在菌と呼ばれる微生物が存在し、お互いバランスを保ちながら共存している。ところが、皮膚の状態が変化すると、バランスが崩れて皮膚トラブルが起こる。マラセチア毛包炎もその一つだ。
東京警察病院(東京都中野区)皮膚科の五十棲健部長は「ニキビと混同されがちですが、原因となる微生物が異なります。しっかりとした診断をしてくれる皮膚科専門医への受診をお勧めします」と話す。
背中などに赤い丘疹ができるマラセチア毛包炎
◇原因はカビの一種
マラセチア毛包炎は、汗をかく暑い季節に、背中や胸、肩などに赤いぽつぽつとした丘疹が毛穴に沿って多発する。かゆみやうみを伴うこともある。
ニキビとよく似ているが、ニキビは顔が主体で、通称アクネ菌と呼ばれる細菌が原因になるのに対し、マラセチア毛包炎は、マラセチア菌というカビの一種(真菌)が過剰に増殖し、毛穴を詰まらせて発症する。「ニキビやあせも、皮膚炎などの治療をしてもなかなか良くならないと言って受診する患者が少なくありません」
さらに、マラセチア菌は、脂漏性皮膚炎や、体や首などに淡い茶色の斑点が生じる癜風(でんぷう)という皮膚疾患の原因にもなり、ステロイド治療の副作用としてマラセチア毛包炎ができる例もある。「そのため診断と治療には、可能な限り正確な検査が求められます」
◇皮膚環境を整えて予防
マラセチア毛包炎の確定診断は、毛包の内容を少しかき取って染色液で真菌を染め出す直接鏡検法が行われる。しかし、中には正確に検査がなされず、何かしらの外用薬が処方されてしまうケースも少なくない。「適切な処方がされないと、かえって拡大することがあります」
マラセチア毛包炎の治療は、検査で確定診断に至っていれば、適応のある抗真菌薬(イトラコナゾール)を内服すると、おおむね6週間から2カ月で軽快するという。やや効果は劣るが、抗真菌外用薬を用いることもある。ただし翌年も再発しやすい。近年では保温効果のある衣服を着用し、冬に発症する人もいる。
五十棲部長は「汗をかいたら小まめにシャワーを浴びて皮膚を冷却させ、ミコナゾール硝酸塩を含むシャンプーやボディーソープを使用すると、マラセチア菌の増殖を抑える効果が期待できます」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/03 05:00)
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