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コンタクト、不適切使用で目に重い障害
~角膜移植必要な場合も~

 コンタクトレンズを使っている人は少なくない。視力の補正だけでなく、おしゃれのためにつけるケースもあるが、使用・保管方法を誤ると、目に取り返しのつかない障害をもたらす恐れがある。眼科検査を基に自分に合った品を購入し、適正に使用しようという意識が若年層を中心に低下しているとの調査結果もあり、悪影響が懸念されている。

コンタクトをつけようとする女性(イメージ画像)

 ◇リスク高い医療機器

 日本コンタクトレンズ協会によると、2023年の出荷額(協会加盟企業の合計)は、無色透明のクリアタイプが前年比6.5%増、色付きのカラータイプが8.9%増で、両者を合わせた全体では6.9%増。新型コロナウイルス禍による一時的な落ち込みは見られたものの、国内市場は拡大傾向にある。眼鏡とコンタクトの両方を所有し、場面に応じて使い分ける人も珍しくない。

  一方、手軽に使用されているとはいえ、医薬品医療機器法では高度管理医療機器・クラスⅢに分類される。不具合が生じた場合のリスクは4段階のうち上から2番目で、腎臓透析機器などと同じだ。ずさんな取り扱いは目の健康問題に直結しかねない。

 ◇就寝時も外さず、長期間交換しない、…

 川崎市立多摩病院眼科部長の松澤亜紀子医師は、コンタクトについて「不適切な装用により自覚症状に乏しい不可逆性の障害が生じたり、不十分な衛生管理で感染症が起こり、生涯にわたって視力障害が残ったりする可能性がある」と警鐘を鳴らす。同医師によると、長時間あるいは就寝時の使用で、目の表面にある角膜に傷や浮腫、炎症が生じ、ずきずきする痛みやかすみ、充血といった急性症状につながるケースがある。さらに、酸素の通りが悪いレンズを長期間使用すると、角膜の透明性を維持する内皮細胞が減少して角膜が濁り、視力が低下する懸念もある。

コンタクト関連の障害などについて話す松澤亜紀子医師

 松澤医師が診療した患者の一人は実際、酸素の通りが悪いカラーコンタクトを使い、角膜内皮細胞の数が大幅に減少。そのまま使用し続けた場合、角膜移植が必要になるかもしれないという。

 また、別の患者は1日使い捨てレンズを数カ月つけっ放しにするという生活を4~5年継続。自覚症状は特になかったものの、炎症が生じたりして角膜が白濁し、永続的な視力障害が残ってしまう状態に陥った。

 感染症防止へ重要な衛生管理

 感染症に関しては、緑膿(りょくのう)菌やアカントアメーバによる角膜潰瘍などに注意が必要だ。緑膿菌もアカントアメーバも水中や土壌など自然界に存在する。感染すると重い症状になる場合も多く、「学会の調査では、重症コンタクトレンズ関連感染症の約3割が緑膿菌、半分以上がアカントアメーバが原因」(松澤医師)とされる。中には眼球が溶けてしまっているような重篤な症例も見られる。

 感染はレンズの不適切な消毒・洗浄・保管に起因する場合が少なくない。レンズケースが細菌に汚染されている可能性があるため、「『レンズはつける前に必ずすすぎ、ケースは毎日洗浄・乾燥させ、定期的な交換を』と伝えている。でも、なかなか守られない」(同)という。加えて、ネット上には誤情報があふれており、懸念は尽きない。

 16~49歳の女性を対象とした2018年の調査では、コンタクトレンズの使用開始から1年以内に目に障害が発生した人が34.5%に上った。要因として挙がるのは衛生管理の低さ、交換期間を超えた使用、つけたままの睡眠、長時間使用、眼科受診なしでの店舗やネットでの購入など。松澤医師は「コンプライアンス軽視によって目の障害が生じていることが分かる」と話す。

調査結果を説明する川浦康嗣・日本コンタクトレンズ協会会長

 ◇危惧されるコンプライアンス意識低下

 コンタクトレンズ協会が今年1月に実施したユーザー調査で、そのコンプライアンス意識が低下していることが分かった。安全性を担保するための必要事項がきちんと守られておらず、危惧せざるを得ない事態だ。

 同調査によると、レンズケースの保存液について、1回の保存ごとに交換する割合が21年調査に比べて減り、複数回保存したり、ほとんど交換しなかったりする人が増加。男性は「2枚重ねで装用」「友人・知人・家族などとレンズの貸し借り」「水道水でレンズを洗った」などの不適切な取り扱いをした人が女性よりかなり多い。この状況を反映してか、目の疾病・不調による1カ月以上の治療経験者は女性が4.8%だったのに対し、男性は10.8%と高い割合を示した。

 ◇SNSで若者に訴え―協会

 同協会の川浦康嗣会長は「コンプライアンス低下の一因として、正しい使用方法が伝わっていないことが考えられる」と指摘する。背景には、若年層を中心とした眼科受診率の低下や個人輸入、雑貨店・ディスカウント店での購入増があり、適正使用の指導を受ける機会が減っているとみられる。

 調査結果を踏まえ、同協会はネット販売を含めた非対面店舗やその利用者に対し、眼科受診およびコンタクトの正しい利用・保管方法に関する情報提供を強化する。特に若者に注意を促すため、多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーに協力を仰ぎ、TikTok(ティックトック)などSNSを通じた啓発にも力を入れる。(平満)

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