こちら診察室 学校に行けない子どもたち~日本初の不登校専門クリニックから見た最前線

不登校と不安障害の関連性~早期発見と診断がカギ~ 【第8回】

 これまで不安障害に起因する不登校の現状と、不安障害の下位分類について具体的に見てきました。今回は、不安障害の並存性の高さや早期発見・診断の重要性についてお話しします。

 ◇不安障害の併存性について

 不安障害を理解する上で重要なのは、その高い併存性です。不安障害は分離不安障害、社交不安障害、全般性不安障害、パニック障害、特定の恐怖症、選択性緘黙といったタイプに分類されますが、これらは単独で存在することはむしろ少なく、しばしば複数の不安障害が重なって出現します。488人の不安障害のある子どもたちを対象とした研究では、約60%の患者が別のタイプの不安障害を同時に有していたことが報告されています[1]。

 さらに、不安障害は注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム障害(ASD)、学習障害といった他の発達障害とも高い確率で併存することが知られています。このような併存性の高さは、不安障害の早期発見と適切な対応をより複雑にする要因となっています。

不安障害は単に不登校を招くだけでなく、青年期における新たな精神疾患の発症につながる可能性がある(イメージ)

不安障害は単に不登校を招くだけでなく、青年期における新たな精神疾患の発症につながる可能性がある(イメージ)

 ◇経過と予後

 不安障害の経過と予後については、4年間の追跡調査から重要な知見が得られています。治療を受けた患者のうち、21.7%が安定した寛解状態を維持できた一方で、48%は症状の改善と再発を繰り返し、30%は慢性的な症状が続いていました[2]。特に注目すべきは、初期の治療に良好な反応を示した患者の方が、その後の慢性化のリスクが低かったという点です。

 さらに、不安障害は単に不登校を招くという問題にとどまらず、教育達成の低下や、青年期における新たな精神疾患の発症、さらには成人期まで及ぶ機能障害につながる可能性があります。実際、思春期に不安障害を経験した人は、成人期にも不安障害やうつ病を持つことになるリスクが2~3倍に高まることが報告されています[1]。

 このように、不安障害は早期の発見と積極的な治療介入が極めて重要な疾患であることが分かります。次章では、その早期発見と診断のポイントについて詳しく見ていきましょう。

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