日本人でも罹患者急増
~好酸球性食道炎の実態(大阪公立大学医学部付属病院 沢田明也病院講師)~
欧米では患者数が急増しているアレルギー性疾患の一つ「好酸球性食道炎」。このほど、大阪公立大学医学部付属病院(大阪市阿倍野区)消化器内科の沢田明也病院講師らの研究グループが行った大規模調査により、日本人でも患者が急増していることなどが明らかになった。

好酸球性食道炎の主な自覚症状
◇中年男性に多い
好酸球性食道炎は、アレルギー反応に関わる白血球の一つ「好酸球」が食道の粘膜上皮に増え、炎症を来す慢性疾患。炎症が続くことで食道の働きが悪くなり、食事が通りにくくなることなどがある。「主な自覚症状はつかえ感と胸焼けです。胸痛やみぞおちの痛みを訴える人もいますが、日本人では軽症が多く見られます」
30~50歳代の中年男性に多い。発症すると、慢性的に食事中のつかえ感などを感じるようになる。
沢田病院講師らの研究グループによると、2005~22年の計1500万人件超の診療報酬明細書および健診データを解析したところ、22年の罹患(りかん)率は10万人当たりで2.82人だった。「アジアを含む日本ではまれな病気と考えられていましたが、17年と比べ罹患率が3倍に増えていました」
沢田病院講師は、原因はアレルギー性疾患が全般的に増えていることや、病気の認知度が向上したためではないかと考察する。また、喫煙が発症リスクの低下に、飲酒が発症リスクの上昇に関与していたという。
◇消化器内科で胃カメラ
好酸球性食道炎は、日本人に多い胃腸症状を呈する好酸球性胃腸炎などを含む「好酸球性消化管疾患」の一つとして難病指定されている。胃カメラ検査で採取した組織の検査によって診断され、治療には胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカーが使われる。効果が見られなければ、慢性気管支ぜんそく治療に用いられる吸入ステロイド薬の嚥下(えんげ)療法が検討される。
中には無症状の人がいるが、病状が進むと食道の狭窄(きょうさく、狭まること)もあるという。狭窄があれば、バルーンカテーテルによる拡張術が行われる。
日本人では罹患者の大半が軽症なため、症状があっても我慢したり、「気のせい」と思い込んだりする人も少なくないようだ。
「罹患者の約半数にアトピー性皮膚炎や気管支ぜんそくなどのアレルギー性疾患があることが分かっています。慢性的につかえ感があるようなら、消化器内科での胃カメラ検査をお勧めします」と、沢田病院講師は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/01/23 05:00)
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