2023/07/26 05:00
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札幌医科大学は1950年、北海道立女子医学専門学校を前身に、戦後の新制医科大学の第1号として医学部医学科の単科で開学した。現在は保健医療学部も含めた北海道で唯一の公立医系総合大学として、地域医療の担い手を輩出している。
医学部入学者に占める道内出身者の比率は8割を超え、地域密着型の大学でありながら、最先端の研究に積極的に取り組む。中でも、脊髄損傷に対する神経再生医療では、世界をリードする研究成果が実用化に向けた最終段階にきている。「医学医療を攻究できる医師でなければ地域医療に貢献できない」という塚本泰司学長に、医師育成の理念とこれからの医療への展望を聞いた。
インタビューに応える塚本泰司学長
◇道内出身が8割超
札幌医科大学は北海道が設立した医科大学として、道内で医学・医療に従事する医師の育成に重点を置いている。2013年度から一般入試に北海道医療枠(定員55人)を設け、推薦入試(地域枠20人、特別枠15人)と併せて、卒業生が道内に定着する仕組みをつくってきた。入学者のうち、道内出身者の比率は13年度の約6割から増え、15年度以降は8割以上を占めている。
定員総数の半数に当たる北海道医療枠は、道内の出身者に限定せずに、卒業後の初期研修修了後7年間、所定の必修プログラムに従事することが条件だ。この枠で入学した卒業生を19年3月に初めて輩出する。
「北海道の高校生は道内にとどまる率が高いので、基本的には磨けば光る原石のような道内の高校生に入学を目指してほしいと思っています」と塚本学長。そうした高校生をいかにして見いだすかに苦心するという。「試験の点数が基本ですが、面接は難しい。積極的に周りをリードしていく人がいいとも限らないし、おとなしくて素直だからいいと思えば、いざ入学してみるとコミュニケーション力が低いことが分かる場合もある」
◇健全な常識を持つ学生を求む
塚本学長が考える医療人にふさわしい人材とは「健全なコモンセンス(常識)を持った人」。基本的な学力が身に付いていて、医学・医療に取り組んでいこうというモチベーションがあることが前提だが、特別な資質が必要というわけではない。
「医療でいうなら標準治療の標準。一般的には松竹梅の竹だと誤解されがちですが、標準治療とは、これ以上ないベストなものという意味」。患者の気持ちを理解することは大事だが、のめり込み過ぎると客観的な判断を見誤る。患者に寄り添いながらも冷静な判断を下すことのできるバランス感覚が求められる。
健全な常識が身に付いた学生であれば、大学で学ぶうちにバランス感覚は自然と身に付いていくという。「頭は重く、尻は軽く」。塚本学長が臨床現場で若手医師の指導を行っていた時に作った標語の一つだ。「例えば病棟から電話がかかってきたとき、その場で指示を出せるのは10年以上の経験者だけ。若い医師は、判断する前に病棟へ足を運び、患者さんのことを診てから判断させています」
◇医学攻究と地域貢献
建学の精神として「進取の精神と自由闊達(かったつ)な気風」を基盤とした「医学・医療の攻究と地域医療への貢献」を掲げる。地域医療への貢献が目標であることは紛れもない事実だが、あくまでも医学・医療の攻究が先なのだと塚本学長は強調する。
「地域医療に携わる医者はレベルが高くなければならないというのが僕の持論。大学として地域にいい加減な医者を送ることはできないと常に学生には話します」。医療機関に選択の余地がある都会とは異なり、地方では一人ひとりの医師が患者にとっての最後の砦となるからだ。
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