2021/06/23 05:00
人生の最後まで自分の足で歩くために
(寺師浩人 日本フットケア・足病医学会理事長)
学校のマラソン大会。いつになってもゴールしないわが子に、いらいらした経験はありませんか。先頭に何周も後れを取って、「サボっているんじゃないの」と、突っ込みを入れたくなるような走り方をする子がいます。
でも、ちょっと待って。その子の足の裏を観察してみてください。土踏まずのアーチがつぶれた扁平(へんぺい)足ではありませんか。
◇小学校低学年まで、ほぼ扁平足
子どもの足が扁平足かどうかチェックするには、まず子どもを真っすぐに立たせます。視線は落とさず、前を向くようにさせ、このとき足は肩幅くらいで左右並行に立ち、重心がその間にくるようにしっかりと体重を乗せてもらいます。
土踏まずの部分に人差し指と中指の2本を第1関節まで入れて、土踏まずが持ち上がっているかを確認します。持ち上がっている場合は問題なし。小学校高学年になっても持ち上がっていない場合は、扁平足の可能性ありです。
歩き始めたばかりの子どもは、みんな扁平足です。小学校に入っても、低学年であれば、ほぼみんな扁平足です。運動したり、走ったり、足をたくさん使うことで、小学校高学年くらいまでに足底のアーチが形成されていきます。
足の形は両親の混合ではなく、どちらかの親、もしくは近親者の誰かをそのまま引き継ぐ傾向にあるため、両親のどちらかが扁平足の場合、子どもも同じような足である可能性が高いと言えます。
遺伝的要素がないのに、高学年になっても扁平足が続く場合は、運動不足で足を使っていないか、不適切な靴を履いていた影響などが考えられます。
◇扁平足のデメリットとは
人間の足は、衝撃を吸収するために、わざと不安定な構造で、たわむようにできています。アーチが全くない重度の扁平足の場合、足が内側にねじれた状態で歩くため、体のバランスが崩れ、足の筋肉や骨に大きな負担がかかってきてしまいます。
さらに、土踏まずがたわんで衝撃を吸収することができず、効率よく蹴り返して歩くことができないため、同じ距離でも大量のエネルギーを消費して歩いたり、走ったりしているのです。
だから、人よりも疲れやすい。もう十分に頑張っているのに、サボっているように見られてしまうのは、とても気の毒だと思います。
扁平足は単なる形の特徴だけにとどまらず、歩く、走るなど、あらゆる動作に支障を来すものなのです。
◇歩き始めは足首まで覆う靴を
足首まで覆うハイカットの靴(ミキハウス提供)
子どもの靴は、子どもの足の成長に影響するため、慎重に選ぶ必要があります。ネット通販などで気軽に買える時代になりましたが、靴はきちんと試着して、足に合っているかどうかを確認して買ってほしいと思います。
歩き始めは、まだ足の骨格構造が柔らかいので、足首まで覆うハイカットの靴が最適です。ただ、これだと足首を使って走ることが難しいため、幼稚園の年少、3歳くらいで走りだすようになったら、普通のスニーカータイプの方が動きやすくなります。
大人はひも靴が理想ですが、子どもは自分できちんと結べないので、マジックテープの靴で構いません。履きやすい靴は脱げやすいので、スリッポン(ひもや留め具のない靴)は避けたい形です。
◇1年で1センチ伸びる子どもの足
子どもの足は1年で1センチ伸びるので、個人差はありますが、年に2回は買い替えるつもりで考えておく必要があります。半年に1度はサイズのチェックをしましょう。
子どもの靴を選ぶときは、インソールが外れる靴であれば、取り出してそこに足を乗せて立たせてみます。立つと、アーチがつぶれて前方に伸びるので、必ず立った状態でサイズをチェックすることが重要です。
足の実寸より5ミリほど大きいのが理想のサイズです。すぐに小さくなるからと、大きめサイズを買うと、歩くたびに足が前にずれてしまい、歩きにくいだけでなく、足の発達にもマイナスです。
走り回る子どもたち(写真はイメージです)
◇靴底チェックを
靴のお下がりは、できれば避けたいものです。履く人の癖がついた靴を履くのは、足にとって負担です。とはいえ、すぐに成長する子どもの靴は、まだほとんど履いていないのに、小さくなってしまうことも。
リサイクルショップなどで靴を買う場合は、靴底をチェックして、できるだけ擦り減っていないものを選びましょう。靴の形が歪んでしまっているものも、やめておいた方がいいと思います。
速く走れるという触れ込みの運動靴が人気ですが、普段履きという観点から考えると、かなり気になります。靴底をよく観察してみてください。
トラックを左回りに走りやすくするために、左右非対称なつくりになっているものがときどきあります。
こうした特殊な靴は、トラックを走るときだけ履くのであればいいのですが、1日中履くのは足には負担で、普通に真っすぐ歩いたり、走ったりしていても、靴の擦り減り方に左右差が出てしまう可能性があります。
子供であっても、靴はTPO(時、場所、場合)に応じて選んだ方がいいでしょう。
◇合わない靴はとても有害
子どもは靴が足に合わなくても、なかなか痛みを訴えません。まだ足が柔らかいので、合わない靴でも、履きこなしてしまうことが多いのです。
よくあるのが、サイズが小さくなったことに気付かないまま、履き続けているケース。小さくなった靴を履き続けると、靴の中で足の指が曲がってしまい、足の発達に影響が出てきます。
子どもは全身の体が柔らかく、補正能力も強いため、もし足に弱点があっても、他の部位で補うことができます。そんな子どもが、もし足が痛いと訴えたら、相当悪くなっていると受け止めてあげてください。
足に弱点のある子でも、足に合った靴選びと、インソールを活用することで、多くのトラブルは改善されていきます。子どものうちから適切な対処をしておけば、大人になってから、大きなトラブルに発展するのを防ぐことができます。
◇後ろ姿を観察しよう
左右対称か、足首が内側、あるいは外側に傾き過ぎていないか、片手だけ振って歩いていないか、などをチェックしてください。人と比べるのはよくないと言われる昨今ですが、歩き方や走り方など、動き方にどんな特徴があるのか。速い遅いではなく、足の健康を守る目的で見るようにしましょう。
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