治療・予防

選択肢広がる肺がんの免疫療法薬
治癒の可能性も期待

 免疫抑制を解除して、がん細胞を攻撃させる「免疫チェックポイント阻害薬」の選択肢が広がっている。肺がんに対しては、ニボルマブ、ペムブロリズマブに加えて、2018年4月にアテゾリズマブが使用可能となった。国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)の大江裕一郎副院長(呼吸器内科長)は「最も病期の進行したステージ4の肺がんでは今まで治癒がほとんど期待できませんでしたが、その可能性が出てきた」と期待感を示す。

非小細胞肺がんの治療に使われる免疫チェックポイント阻害薬

 ▽投与中止後に効果持続も

 免疫チェックポイント阻害薬の治療対象となるのは、肺がんの85%を占める「非小細胞肺がん」というタイプで、原発巣以外に転移したステージ4の患者に限られる(18年6月初旬時点)。

 3剤のうち、1次治療に使用できるのはペムブロリズマブのみで、2次治療では3剤とも使用可能だ。3剤は投与間隔が異なり、ニボルマブは点滴回数が2週間に1回なのに対し、ペムブロリズマブとアテゾリズマブは3週に1回で済む。ペムブロリズマブは投与前に肺がん組織の検査を要し、PD―L1というタンパク質を発現するがん細胞が一定の割合で認められる人が対象だ。医療現場では3剤の使い分けを模索する動きも出てきている。

 大江副院長は「免疫チェックポイント阻害薬に対して効き目を示す人と示さない人がいますが、効く人では長く効果が持続するのが特徴です。海外では、2年間治療を継続した後、投与を中止しても5年以上生存している人が16%いると報告されています。将来、治癒する人が出てくる可能性もあります」と説明する。

 ▽副作用や医療費が課題に

 ただ、使用により免疫を活性化させるため、間質性肺炎のほかに、肝障害、大腸炎・重度の下痢、1型糖尿病などの免疫関連の重大な副作用が出現する恐れがある。そのため、間質性肺炎や自己免疫疾患を患っている人、高齢者などでは慎重な投与が求められる。

 また、3剤とも薬剤費が高額なことも課題だ。例えば、アテゾリズマブの1回の薬剤費は約60万円で、患者負担が3割なら約20万円となる(高額療養費制度の活用で費用は抑えられる)。

 薬代が高いだけに、国の財政を圧迫するとの懸念が指摘されているが、効く人と効かない人をどう見分けるかが医療費抑制のカギとなる。有効性を事前に予測できるバイオマーカーの実用化が期待されるが、現時点で確立しているのは、ペムブロリズマブの効果とPD―L1との関連性に限られる。さらなる解明が待たれるところだ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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