一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第10回)
カテーテルスタジオは「宇宙船」
4つの手術を同時進行

 ◇人づくりの成果を自認

 2017年7月下旬、一度に4つの手術が同時進行で進められた。三角氏は壁一面のモニターを注視しながら、司令塔から無線で指示を飛ばす。ピンポーンとブザーが鳴ると、三角氏が素早く防護服を着けてスタジオに入る。

 「僕の患者さんはすべて僕が治療します。ロータブレーターが必要な難しい症例のときも入りますし、治療中に他のスタジオから連絡が入れば、その場で指示を出します」

 治療中はX線で血管とカテーテルを透視しながら行うため、被ばくしないようスタッフ全員が防護服を着用。鉛のエックス線遮蔽(しゃへい)材が使われ、1着当たり4、5キロの重さ。ずっしり重量感があり、立っているだけで体力がいる。この日のカテーテル治療は予定だけで18件。新患で来た外来患者を治療することが毎日あり、多い日には1日40件にも達するという。

 「即入院を勧めたのに、いったん家に戻ってしまい、来ないと思ったら亡くなったという患者さんがいました。2、3日待っても大丈夫な患者さんもいますが、今すぐに治療しないと間に合わない患者さんもいる。病気は待ってくれないから」

 毎朝9時から外来診療を始め、終わるのが午後5時。カテーテル治療はそれから開始するので、深夜まで及ぶこともしばしば。「僕はメチャメチャ厳しいですよ。決して甘やかしたりはしない。ドジをすると、すぐにイエローカードが飛びます。なんでダメだったのかはちゃんと言って、2度目はレッドカードで一発退場。誰でも失敗はします。でも同じ失敗は許しません」。医師以外の若いスタッフたちも緊張感を持ちながら、黙々と働いていた。

 米国では、看護師らは単なる医師のアシスト役ではない。三角氏は帰国後、医師以外の職種でも専門職としてのプライドを持って働けるよう、カテーテルの専門資格をつくるなどモチベーションを高める努力を続けた。

 「米国では医師と同じぐらいの知識を持って働く看護師もいますが、当院の看護師はそれに匹敵すると思います。多くの症例を経験し、場数を踏んでいるから質が上がってくるのです」。三角氏が病院づくりで最も大切にしてきた人材育成の成果と自認している。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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