一流の流儀 「信念のリーダー」小久保 裕紀WBC2017侍ジャパン代表監督
(第8回)ジャイアンツに無償トレード
球団移籍は勉強になる
「ホークスにいれば、僕のサードは安泰だったでしょう。でも、ジャイアンツの春のキャンプでは、『(広島カープから移籍してきた)江藤智選手と一騎打ちだ』と、当時の堀内(恒夫)監督に言われました」。これは早くから結果を残さなければいけない。もう一度レギュラーを取るんだ―。小久保さんはそんな強いエネルギーを持って、キャンプを過ごした。移籍してきて、ファンに認めてもらわなければいけない、成績を残さなければいけないという気持ちもあった。
新たな交友関係を築く必要もあった。ホークスであれば、小久保さんがどういう人物かは皆が分かっていた。しかし、当時のジャイアンツで旧知の間柄は、仁志敏久選手くらいだった。「僕はこういう人間です」。小久保さんは、他のすべての選手にあいさつをし、食事を共にしながら、自分を分かってもらわなければならなかった。「そういう作業を、30歳を超えてからできたことが良かったと思っています」
昔から面倒見が良く、ホークス時代も遠征先では年下の選手を満遍なく誘って食事に行っていた。ジャイアンツでも同じようにして、チームに積極的に溶け込む努力をした。
そしてもう一つ、王さんへの強い思いがあった。
「王さんの下で4番を張ってきた人間が、活躍できずにその顔に泥を塗るようなわけにはいかないと思いました。ジャイアンツでの1年目に40本塁打を打てた時には、これで面目を保てたなと思いました」
「自分のアドバイス」と前置きをした上で、「1球団で最後までやり抜くというのは一つの美学でしょう。でも、2~3球団、違うチームを見るということは幅が広がり、勉強になります」。球団によって、大きく雰囲気が異なる。ホークス時代は自分では気を付けているつもりだったが、「良い面でも悪い面でも影響力が強過ぎる王様でした」と笑う。「ジャイアンツでは、自分が外様だとすごく感じました。このチームは基本的に、生え抜きの選手が優先です。でも、卑屈になることは全くなく、当然だと思っていました。そして、ジャイアンツでの3年間にとても感謝しています」(ジャーナリスト/横井弘海)
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(2018/09/11 10:00)