女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは

つらい月経痛、レース後に意識もうろう
2度目の五輪見据えピル服用始める―吉井小百合さん

 スピードスケートの短距離はスリリングな競技だ。トップスケーターなら女子選手でも時速50~60キロのスピードが出る。勝負を大きく左右するのはカーブの滑り。いかに減速せず、直線に向けて再加速していくかが鍵だ。トリノ、バンクーバー両五輪で日本代表として戦った吉井小百合さんは「車と違ってブレーキもない。ミスなく、きれいに回るための練習を積み重ね、技術を究めていくことが大切。うまく回り切れたときの爽快感は大きいですね」と話す。

 「レース後は意識ももうろうとしている中で、動けなくなってしまうんです」と月経痛のつらさを話す吉井小百合さん
 その滑走技術を生む土台になるのがフィジカルだ。選手は、太ももなどの筋力や瞬発力、パワーを保つ持久力などを鍛える。長野県茅野市生まれの吉井さんは、東海大三高(現東海大諏訪高)時代、その才能を見込んだ監督の指示で、男子選手に交じって練習した。ランニングや坂道ダッシュも、自転車エルゴメーターなどの器具を使ったトレーニングも男子と一緒。「男子に勝てれば女子に負けるはずがないと、自分に言い聞かせて練習していました」

  高校を卒業した2003年、地元長野の三協精機(現日本電産サンキョー)に入社。長島圭一郎選手や加藤条治選手、小原唯志選手らと共に、世界を舞台に戦うようになって、さらに厳しいトレーニングを積んだが、「ありがたいことに現役時代、大きなけがや故障はありませんでした」と話す。

  実業団の名門チームはメディカルチェックも生かしてトレーニングを進めていた。「病院の整形外科の先生も選手の体の可動域を見て『このアプローチでトレーニングをしよう』とか、『このトレーニングをすると、ここの痛みがなくなる』といった細かい指導をしてくれた。痛みを次につなげない体ができるようになったと思います」

 ◇世界を転戦中も襲う痛み

 社会人1年目、全日本距離別スピードスケート500メートルに出場して=2003年11月、長野・エムウエーブ
 こうした恵まれた競技環境の中でも、吉井さんが抱え続けていた健康問題が、つらい月経痛や月経不順などの悩みだ。

 スケーターとしては、世界のトップに迫る存在へと成長した。社会人2年目のシーズンにワールドカップ(W杯)長野大会で、W杯初の表彰台に立ち、06年には21歳でトリノ五輪に出場。500メートル9位、1000メートル15位の成績を収め、次のバンクーバー五輪で表彰台に立つことを目指した。そんな日々にも月経の周期は乱れ、痛みは繰り返し襲ってきた。

 ジュニア時代から悩んでいたが、社会人になって練習の強度が上がると、月経前の腹痛や腰痛が、以前にも増してつらく感じられた。もちろん、試合と重なってしまう時もあった。レース中は痛みを忘れていても、滑り終わって足がガクガクになった時には「ドーンという痛み」を感じたという。

 「本当に息が上がって、酸欠状態で、頭も意識ももうろうとしている中で、動けなくなってしまうんです。近くにあるごみ箱を引きずり出して、そこに嘔吐(おうと)してしまうこともありました」。意識が薄れて「眠ってしまうのでは」と思ったまま、トイレに1時間ほどこもったこともあった。

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