女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは
長い人生考えて体づくりを
校庭リンクから世界へ、経験次代に―吉井小百合さん
スピードスケート女子短距離のトップ選手としてトリノ、バンクーバーの両五輪に出場した吉井小百合さん。ハードな練習を続けていた時には、無月経になった時期もあり、「子どもを授かれないかもしれない」と思ったこともあったが、引退した今は、2児の母だ。「やはり競技をしている段階から、アスリートとして勝つためだけではない、長い人生を考えた体づくりをしていく必要がある」と実感を込めて話す。
走ることが好きで、5年生の時にはアトランタ五輪の女子マラソンで2大会連続のメダルを取った有森裕子選手の「初めて自分で自分をほめたい」という言葉に感動し、陸上でオリンピックを目指す夢を抱いた。だが中学1年の時、母が買ってくれた新型のスラップスケートの靴を履いて滑ると、いきなり全国大会で3位に入り、スケートが面白くなった。
地元長野で開かれた冬季五輪の観戦が運命を決定づけた。男子500メートルで金メダルを取った清水宏保選手の滑りは圧巻だった。「大勢の観客がいる中の集中力は本当に格好良くてオーラを感じた。自分もあの空間に立ちたいと思いました」。オリンピックの夢をスケートで達成する目標に変えた瞬間だった。
◇月経の悩み「相談できる場あったら」
ジュニア時代から全国レベルの選手になり、アスリートとして栄養学は繰り返し学んだものの、月経に関する知識を学ぶ機会はまだなく、自分で情報を探すしかなかった。無論、男性指導者に相談できるような雰囲気はなかった。登校中に月経痛で具合が悪くなり、監督にきょうは練習を休むと伝えた先輩選手が「練習が嫌なんじゃないか」と思われてしまうこともあったそうだ。
「痛みを訴えても『心が弱い』とか『練習したくないからだ』と言われると、もう月経が来ない方が楽だと思ってしまう。それが月経不順をひどくさせてしまうんです」。実業団に入ると練習は一層厳しくなり、月経の悩みも深まった。競技人生の集大成となったバンクーバー五輪の1年ほど前から、低用量ピルを飲んで月経痛を緩和し、月経をコントロールするようになるまで、長い間、悩みを克服することはできなかった。
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(2019/01/12 07:00)