こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第3回 治療は急にやめては駄目
~アトピー性皮膚炎、「ステロイド離れ」は徐々に~ 野村有子・野村皮膚科医院院長


 ◇患者に応じて免疫抑制剤も

 ここまでステロイド外用薬について説明してきましたが、アレルギー反応を食い止めるためには、免疫抑制剤のタクロリムス軟こうを塗るという選択肢もあります。医師は個々の患者の症状などに応じ、この二つの外用薬を選択したり、組み合わせたりしながら治療を進めていきます。

 タクロリムス軟こうは、高まっているアレルギー反応を抑える外用薬。2歳~16歳未満は0・03%、16歳以上は0・1%の濃度で使用します。

 ステロイド外用薬のような副作用が出ないため、顔にも使用しやすい薬です。アトピー性皮膚炎でよく見られる赤ら顔や首の黒ずみにも効果的です。

 ただ、使用上の注意点として、皮膚の中に浸透する際の刺激感があります。具体的には、皮膚に塗って4~5時間くらいたつと、ひりひりする、しみる、ほてる、かゆくなるなどの症状が出ることがあり、特に入浴時に強く感じやすくなります。

 刺激を少なくするために、症状が重いところは、まずステロイド外用薬で炎症反応を抑えて、症状が落ち着いてからタクロリムス軟こうを使用します。

 初めて使うときには、1円玉1個分くらいの範囲のみに塗り、少しずつ塗る範囲を増やしていきます。3~4日たつと、だんだん刺激感が減ってきて、2週間ほどでなくなりますので、それまでは一度にたくさん塗らないようにするのも、こつになります。

 ◇保湿剤で症状改善後も乾燥肌防ぐ

 アトピー性皮膚炎の外用薬としては、乾燥してバリアー機能が低下している肌の働きを正常化するため、保湿剤も必需品です。症状が強いときにも全身の保湿は大切で、ステロイド外用薬やタクロリムス軟こうと併用して回復を早めることもできます。

 症状がよくなった後でも、乾燥肌の予防として使用していきます。病院で処方してもらう保湿剤と市販品がありますが、医師のアドバイスに従い、使いやすくて刺激のないものを選ぶとよいでしょう。

 保湿剤を塗るときにも、こつがあります。

 まず、手のひら全体でやさしくなでるように塗り、ごしごしすりこまないこと。肌がかさかさしているところや、粉っぽく乾燥しているところには、2度塗りしてもいいでしょう。

 塗るタイミングとしては、入浴の直後が効果的。1日2回塗ると、1回塗る場合の4倍、3回塗ると10倍くらい効果が上がるといわれているので、まめに塗ることが大切です。

 汗をかいた後や汚れが気になるときは、ぬれタオルで軽く肌をふいてから塗るとよいでしょう。

 外用薬以外の治療としては、かゆみやアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服療法、紫外線を照射する光線療法もあります。また、改めて詳しく紹介しますが、画期的なバイオ医薬品の注射薬も最近出ました。

 ただし、治療はどんな場合でも塗り薬の外用療法が基本です。その他の治療法はプラスアルファの位置づけとなります。(野村皮膚科医院院長・野村有子)

 野村 有子氏(のむら・ゆうこ)

 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。(了)





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