こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第3回 治療は急にやめては駄目
~アトピー性皮膚炎、「ステロイド離れ」は徐々に~ 野村有子・野村皮膚科医院院長

 アトピー性皮膚炎の治療で、すでに起きているアレルギー反応を食い止めるためには、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の外用薬を皮膚に塗るのが基本です。適切に使えば、炎症が弱くなり、かゆみも軽くなるなど、症状は改善します。

 ただし、症状がよくなったときも、治療を急にやめてはいけません。

 皮膚の表皮は1カ月かけて生まれ変わりますが、アレルギーによる炎症反応が消えるには、最低3カ月はかかるといわれています。皮膚表面の赤みやかゆみが取れているように見えても、皮膚の奥では、まだ炎症反応が残っているのです。

 このため、症状がよくなったかどうかの正確な判断が必要になります。ステロイドをずっと塗り続けると、副作用の心配もあるので、きちんと見極めることが、とても大切です。

 皮膚のかゆみや赤みがある場合は、まだよくなっていません。かゆみも赤みもなくなったとき、その部分の皮膚を、目をつぶってやさしくなでるように触ってみてください。そして、今までかゆみや赤みがなかった部分の感触と比べてみてください。

 もしも、皮膚にごわつきや硬さがわずかでも残っている場合は、まだ炎症反応が残っている証拠です。ほかの部分とほぼ同等の軟らかさや、表面のつるっとした感じがあれば、よくなったといえます。

 とはいえ、よくなっても治ったわけではありません。私はよく、高血圧患者の服薬にたとえ、薬を続けるようアドバイスします。

 「血圧の高い人が降圧剤を飲むと血圧が下がりますが、下がったからといって、すぐに降圧剤をやめたら、また血圧が上がりますよね?」

 ◇塗布の間隔や薬の強さで工夫する

 「よくなった」という皮膚の状態は、薬で炎症を抑えている状態です。すぐに薬をやめると、また炎症反応がぶり返してしまいます。

 そうならないよう、この段階ではステロイド外用薬を塗り続ける一方で、徐々に「ステロイド離れ」を図っていきます。二つの方法があります。

 一つは「プロアクティブ療法」です。

 ステロイド外用薬の種類や塗る量は変えずに、塗る回数を減らしていく方法です。症状に応じて、1日おき→2日おき→週末のみ、といったように、塗る頻度を徐々に減らしていきます。

 ステロイド外用薬を塗らない日は、必ず保湿剤を塗るようにします。

 もう一つは「ランクダウン療法」です。

 徐々に効き目の弱いランクのステロイド外用薬に切り替えていく方法です。薬が不要になれば、保湿剤のみにしていきます。

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