こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第5回 ダニ対策や衣服の注意点…日常の心得は
~アトピー性皮膚炎、生活に欠かせない工夫~ 野村有子・野村皮膚科医院院長

 ◇服の素材や洗剤もチェックする

 日常身に着ける衣服の選択は大切なのですが、意外に忘れられている点です。肌に触れる衣服の素材は、吸湿性と通気性に優れている綿や絹がふさわしいでしょう。

 衣服と皮膚の間にあるわずかな空間の「快適な気候」は、胴体部分で気温32度±1度。湿度は50%±10%、気流は毎秒10㌢前後といわれます。

 野村医師推奨の肌着の一つ。皮膚に食い込まないよう工夫されている(野村医師提供)

 そのほか、肌に優しい衣服のポイントは、肩ひもやベルト部分が幅広く皮膚に食い込みにくい▽縫い目がフラットで糸が肌に当たらない▽表示タグが服の外側に配置してある―といった点に配慮があるものです。

 私は患者に、肌触りを徹底的に追求している会社が日本で縫製する肌に優しい肌着を勧めています。

 衣服を洗濯するための洗剤や柔軟剤・漂白剤にも注意が必要です。いくら肌に優しい肌着を選んでいても、洗剤などが肌に合わないものだと、アトピー性皮膚炎はなかなか改善しません。

 

 レースが肌に当たらず、おしゃれなデザインの肌着(野村医師提供)

 洗剤については、香料やタンパク分解酵素などが入っていない無添加のせっけん洗剤がお勧めです。私は、合成洗剤を一切作らないこだわりを持つ会社が製造する無添加の液体せっけん洗剤を使うよう、患者にアドバイスしています。

 ◇汗はかいた方がよいが、放置しないで

 アトピー性皮膚炎では、症状がひどいと汗をかきにくく、改善すると汗をかけるようになるといわれています。

 実は、汗の中には、尿素や乳酸などの保湿成分や抗菌ペプチドやプロテアーゼなど、皮膚を正常に保つ成分がたくさん含まれています。

 ただし、汗は皮膚への刺激となってかゆくなりやすいともいわれます。また、汗に混入したマラセチア(カビの一種)由来の抗原がアレルギー反応を起こすケースもあります。汗をたくさんかいて、かいた汗を正しくケアすることが、アトピー性皮膚炎を悪化させないためにもとても大切なことです。

 汗をかいた時のケアは、その汗を放置せずに、水でぬらしたタオルで優しくふき取るか、シャワーや入浴で軽く洗い流せば、かゆみが悪化しないで済みます。

 入浴やシャワーの方法にもこつがあります。

 入浴の際は39度前後の熱くない湯に入りましょう。肌をこすったりしないで、ゆっくりリラックスしてつかることが大切です。

 入浴剤を使用する際には、保湿効果のあるものを選びます。硫黄の成分が強いと肌が乾燥するので、避けてください。

 シャワーは、水圧を強くしてジャージャー浴びてはだめです。そのとき気持ちよくても、皮膚の油分がそぎ落とされ、乾燥や湿疹のもとになります。できれば塩素除去フィルターのついたシャワーヘッドを使用するようにします。せっけんは手で泡立てて、優しく洗ってください。(野村皮膚科医院院長・野村有子)


 野村 有子氏(のむら・ゆうこ)
 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。









   

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