こちら診察室 リウマチ治療の最前線
リウマチは遺伝する? 【第4回】
リウマチは自己免疫疾患の一つで、関節に炎症を引き起こす病気です。遺伝的要因が関与しているとされますが、必ずしも遺伝するわけではありません。
そこで今回は、リウマチの症状や発症要因について詳しく説明します。早期診断と適切な治療を行うためにも、リウマチの初期症状や発症年齢、環境要因などについて理解しておきましょう。
◇朝のこわばりは初期症状の可能性
リウマチの初期症状として、朝のこわばりが挙げられます。朝起きたときに関節が硬く、動かしにくいと感じる場合は、リウマチの可能性があります。
数十分から数時間続くことがあり、関節の炎症が原因で生じます。早期にこの症状に気付き、医師に相談することでリウマチの進行を防ぎ、適切な治療の開始につながるでしょう。
リウマチの発症年齢
◇30~50代の女性に多い
リウマチは、お年寄りの病気と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、リウマチの発症年齢は、30代から50代の女性に多い傾向にあります。男性よりも女性の方が約4倍も多く発症するのです。
女性ホルモンの影響が一因と考えられていますが、正確な原因はまだ解明されていません。
また、この年代の女性は、家事や育児、仕事などで身体に負担がかかりやすいため、注意が必要です。定期的な健康チェックと早期の症状発見が重要です。
◇遺伝は重要な発症要因
リウマチの発症には遺伝要因が重要な役割を果たしているとされています。家族にリウマチ患者がいる場合、その発症リスクは高まります。
遺伝子の異常が免疫システムに影響を与え、自己免疫反応を引き起こすことが一因と考えられています。しかし、遺伝だけでなく、環境要因や生活習慣も発症に影響を与えるため、包括的な対策が重要です。
リウマチは遺伝的要因が関与していますが、とはいえ、必ずしも遺伝するわけではありません。遺伝的素因を持つ人でも発症を予防することは可能です。
早期診断と適切な治療が重要であり、初期症状を見逃さないことが大切です。医師による診断と適切な治療を受けることで、症状の進行を抑え、生活の質を保つことができます。
リウマチは発症から2年間が最も進行が早い(赤=実際の変化、青=従来の予測、出典=Fuchs, H. A. et al.:J Rheumatol 16(5):585, 1989)
◇発症2年以内に30%の関節破壊が進行
リウマチは発症から2年以内に、約30%の関節破壊が進行すると言われています。長い年月をかけて関節が壊されるものだと考えていた方も多いでしょう。
だからこそ、初期段階での適切な治療が関節の破壊を防ぐために非常に重要です。痛みや腫れが起こるだけでなく、関節そのものがリウマチによって壊されてしまうためです。
効果的な薬も数多く存在するため、早期に医師の診断を受け、治療を開始することで関節の機能の維持に努めましょう。
◇喫煙による発症は男性2~3倍、女性1.2~1.3倍
リウマチの発症には遺伝要因だけでなく、環境要因も関与していると考えられています。
いまだ不明な点が多いものの、喫煙や女性ホルモン、コーヒーの摂取などが発症リスクを高めると言われています。
喫煙は、リウマチの発症リスクを高める要因の一つとされています。喫煙者は非喫煙者に比べてリウマチ発症リスクが、男性で2〜3倍、女性で1.2〜1.3倍の発症率になると報告されています。
◇妊娠中の発症は70%減少、女性ホルモンとの関係も大きい
リウマチの発症は、妊娠中には約70%減少するとされています。これは、妊娠中に増加するエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが免疫系を抑制する作用を持つとされているためです。
一方で、出産後3カ月間は5倍に発症率が増加するという報告もあります。産後リウマチと呼ばれることもあり、出産後はホルモンバランスが急激に変化するため、リウマチの症状が悪化したり、新たに発症したりすることがあります。
女性ホルモンとリウマチの関係については、まだ完全には解明されていない部分が多いため、今後の研究でさらに解明されることが期待されています。
◇食べ物による発症は確定的なものない
リウマチの発症に食べ物が直接関与するという確定的な証拠はありません。しかし、適量のアルコール摂取はリウマチの発症リスクを低下させるという報告があります。
一方で、コーヒーの過剰摂取が発症リスクを高める可能性も指摘されています。バランスの取れた食生活を心がけることが健康維持に役立つでしょう。
◇早期診断と治療が重要
リウマチは、遺伝要因や環境要因が関与する複雑な疾患です。朝のこわばりなどの初期症状を見逃さず、早期に診断と治療を受けることが重要です。
また、遺伝的素因を持つ場合でも、生活習慣の改善や定期的な健康チェックで発症を予防することができます。リウマチのリスクを減らすためには、禁煙やバランスの取れた食生活、ストレス管理が効果的と言えるでしょう。早期の対応が、リウマチによる関節破壊や全身の健康への影響を最小限に抑えるポイントです。(了)
湯川宗之助医師
湯川宗之助(ゆかわ・そうのすけ) 1975年生まれ、東京都出身。2000年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。
(2024/08/22 05:00)
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