こちら診察室 医療チームの一員! ホスピタル・ファシリティドッグ

治療に向き合う心を支える 【第2回】ハンドラーの谷口めぐみさん

 こんにちは。静岡県立こども病院でファシリティドッグのタイと活動をしているハンドラーの谷口めぐみです。同病院は、2010年に日本初のファシリティドッグ・ベイリーとハンドラーの森田優子が活動を始めた病院であり、その活動は2代目のヨギと鈴木恵子、そして、現在3代目のタイへと引き継がれています。

 入院患者の中には、定期的に手術や検査が必要なお子さんもいます。そのお子さんやご家族の中には「小さい頃にベイリーに会ったことがある」「ヨギくんにも応援してもらった」と声を掛けて下さることもあります。この病院でのファシリティドッグの活動が14年間切れ目なく続けられていることが、とてもうれしく、そして誇らしく思います。

体調が優れないお子さんも、タイを見ると、自ら手を伸ばしにっこり

 ◇隣に寄り添い、頑張る気持ちを応援

 ななちゃん(仮名、10歳)は赤ちゃんの時に気管の病気が見つかり、その後、数回の手術を受けて療養中だった頃、2代目ヨギと時間を過ごしたそうです。お母さんが「面会時間外にヨギくんに遊んでもらったと聞き、切ない中にも少しほっとしました」と、当時のことを振り返っていました。

 ななちゃんはその後も定期的に検査入院をしました。検査は手術室で全身麻酔をかけて行いますが、子どもの場合、手術室に行く前に緊張や恐怖心を緩和させる目的で、眠くなる薬を投与します。ななちゃんは毎回、眠る薬を飲む段階から緊張で全身がこわばり、手がどんどん冷たくなっていくのをお母さんがさすって温めていたそうです。

 小学生になったある検査入院の時、初めてタイに付き添い依頼がありました。いつものように薬を飲んでベッドに横になりましたが、いつもと違うのは、タイが一緒にベッドで添い寝をしていたこと。タイのぬくもりを肌で感じながらウトウトし始め、体のこわばりや手の冷えがいつもより軽いことを、ななちゃんもお母さんも感じたと聞きました。

 検査後、「タイに集中していて、頭の中で手術のことを考えなくなっていたから、いつもより緊張しなかった」と話してくれ、お母さんも「娘の様子が明らかに違いました。『心が助けられたね』と2人で話しました」と、感謝の言葉を掛けてくれました。その後の定期検査では、「タイがいたら頑張れる」と、眠くなる薬を使用せずに、タイと共に自分で歩いて手術室に向かうことができるようになりました。

 ◇他職種と連携重ね、求められる場面への介入を

 ある日、緊急入院した患者さんへの介入依頼が看護師からあり、すぐに訪問しました。集中治療室に入院したみかちゃん(11)は腫瘍の一部を切除する緊急手術が必要な状態。周りで医師や看護師が準備に追われ、ご両親も医師から手術の説明を聞いているところでした。

 タイが会いに行くと、初めは驚いていましたが、すぐにタイが穏やかな犬だと理解し、うれしそうになで始めました。不安そうに見守っていたご両親もタイとみかちゃんの笑顔を見て、少し表情が和らいでいきました。手術室に向かう時も、タイが付き添って応援し続けました。

 術後すぐに抗がん剤での治療を開始しましたが、腫瘍が大きくなるスピードが予想よりも速く、呼吸状態が悪化し、緊急で人工呼吸器を装着することになりました。ご両親も突然のことで、気持ちの整理が付かない様子でしたが、懸命な治療と本人の頑張りにより、その後しばらくして抜管(気管に入った管を抜くこと)ができる状態になりました。看護師から「抜管して目を覚ました時に、タイがいたら安心すると思う」と連絡があり、抜管時に合わせて訪問しました。

 集中治療室の外に待機していたご両親が「タイくん頼むね」と声を掛けてくれました。お父さんは自分の額をタイの頭に当て、無事を祈る気持ちをタイに託しているようでした。タイが見守る中、みかちゃんは無事、抜管。看護師の「タイくんもずっと応援してくれていたよ」という言葉に、うっすらと目を開け、タイを見つめていました。

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