こちら診察室 リウマチ治療の最前線
リウマチの合併症
~担当医と相談し、納得いく治療を~ 【第7回】
リウマチは、慢性的な関節の炎症を引き起こす自己免疫疾患であり、多くの場合、治療が必要です。
しかし、リウマチの治療にはさまざまな薬剤が使用され、その長期的な服用が合併症を引き起こす可能性があります。
40代女性でリウマチ治療を開始する際、これらの治療薬による合併症が気になる方も多いでしょう。今回は、リウマチの治療薬とその合併症について詳しく解説し、安心して治療を進めるための情報を提供します。
担当医と密にコミュニケーションを取りながら最適な治療法を選ぶことが重要(イメージ)
◇治療で使用される薬剤
リウマチの治療にはさまざまな薬剤が使われ、それぞれ異なる作用メカニズムを持っています。以下に主要な治療薬について紹介します。
【消炎鎮痛薬】関節の腫れや痛みを和らげる
消炎鎮痛薬は、リウマチによる関節の腫れや痛みを和らげるために使用される薬剤です。
これらの薬は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)として知られており、炎症を引き起こすプロスタグランジンの生成を抑制。これにより、痛みや腫れを軽減することができます。
代表的な消炎鎮痛薬には、イブプロフェンやナプロキセンなどがあります。
しかし、これらの薬剤は胃腸障害や心血管系のリスクを高める可能性があるため、使用には注意が必要です。
【抗リウマチ薬】リウマチの進行を抑える
抗リウマチ薬(DMARDs)は、リウマチの進行を遅らせるために使用される薬剤です。
これらは、免疫系の過剰な反応を抑えることで関節の破壊を防ぎます。
代表的な抗リウマチ薬には、メトトレキサートやスルファサラジンがあります。早期に使用することで関節の損傷を最小限に抑える効果があるのが特徴です。
ただし、肝機能障害や感染症リスクの増加などの副作用が報告されているため、定期的な血液検査が必要です。
【ステロイド】他の薬で抑制できない炎症を抑える
ステロイド薬は、強力な抗炎症作用を持ち、他の薬で抑制できない炎症を抑えるために使われます。
プレドニゾロンやデキサメタゾンなどが一般的なステロイド薬です。短期間で効果を発揮し、急性の炎症や痛みを迅速に和らげます。
しかし、長期使用による副作用が多く、骨粗しょう症や糖尿病、感染症リスクの増加が懸念されます。従って、ステロイドの使用は短期間に限られ、必要な場合のみ使用することが推奨されます。
【生物学的製剤】関節破壊の進行を抑える新しい治療薬
生物学的製剤は、リウマチの治療において比較的新しいアプローチであり、関節破壊の進行を抑える効果があります。特定の炎症性分子をターゲットにし、その働きをブロックすることで炎症を抑えます。
代表的な生物学的製剤は、エタネルセプトやインフリキシマブです。生物学的製剤は、重度のリウマチ患者に対して特に有効であり、症状の劇的な改善が期待できます。
しかし、高価であり、免疫力の低下による感染症リスクが伴います。
◇長期服用で合併症の可能性
リウマチの治療薬は、長期的な服用によって臓器障害や合併症を引き起こす可能性があります。これらの合併症は、治療薬の種類や患者の健康状態によって異なります。
主な合併症について詳しく解説します。
合併症①(免疫力低下による肺・呼吸器系の感染症)
リウマチ治療に使用される抗リウマチ薬や生物学的製剤は、免疫力を低下させるため、肺や呼吸器系の感染症リスクが高まります。特に、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症に対する抵抗力が低下しやすくなります。
そのため、治療中は風邪を引いた人との接触を避けることが重要です。
また、予防接種を受けることで感染リスクを減らすことができます。定期的な健康チェックと早期の感染症対策が必要です。
合併症②(数種類の薬剤服用による肝機能障害)
リウマチ治療において、数種類の薬剤を同時に服用することが一般的です。
しかし、これにより肝臓に負担がかかり、薬剤性肝機能障害を引き起こす可能性があります。抗リウマチ薬や一部の生物学的製剤は肝臓で代謝されるため、肝機能に影響を与えることがあります。
定期的な血液検査を行い、肝機能の状態を監視することが重要です。異常が見られた場合は、担当医と相談し、薬の調整や変更を検討する必要があります。
合併症③(薬の副作用による腎機能障害)
リウマチ治療薬の中には、腎機能に影響を及ぼすものがあります。
特に、長期間の消炎鎮痛薬の使用は、腎機能障害を引き起こすリスクが高まるのです。腎機能障害の初期症状には、疲れやすさ、むくみ、尿量の変化などがあります。
これらの症状に気付いた場合は、早期に医師に相談し、適切な対応を取ることが重要です。定期的な血液検査や尿検査を行い、腎機能の状態を監視することが推奨されます。
◇納得のいく治療を続けましょう
リウマチの治療は長期間にわたるものです。
そのため、治療薬の効果と副作用をよく理解し、担当医と密にコミュニケーションを取りながら、最適な治療法を選ぶことが重要です。
合併症のリスクを最小限に抑えるために、定期的な検査や健康管理を怠らず、自分の体調の変化に敏感でいることが大切です。納得のいく治療を続けることで、リウマチと上手に付き合いながら、質の高い生活を送ることができるでしょう。(了)
湯川宗之助医師
湯川宗之介(ゆかわ・そうのすけ) 75年生まれ、東京都出身。00年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。
(2024/10/10 05:00)
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