こちら診察室 介護の「今」
後悔しないための老人ホームの選び方 第42回
老人ホームに入れたい家族と入りたくない本人、逆に、老人ホームに入りたい本人と入れたくない家族。老人ホームへの入居をめぐっては、悲喜こもごもの家族模様が展開される。入居した後も、結果オーライなら良いのだが、「本当に良かったのか」と後悔することもあるだろう。
老人ホーム選びは、本人にとっても、家族にとっても、大きな決断だ。では、どんな老人ホームを選べば後悔しないのだろうか。
老人ホーム選びは、人生最終章の幸せを左右する大きな選択だ
◇老人ホームを定義してみる
一口に「老人ホーム」といってもさまざまな種類がある。老人ホームと名が付いている種別は、特別養護老人ホーム(特養)、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームだが、それ以外にも老人ホームの機能を持っている施設は数多い。
ここでは、「老人ホームとは、一定の介護サービスを受けられる高齢者入居施設のこと」と広く定義することとしよう。
◇要介護認定が必要か否か
広義の定義による老人ホームの種類を理解するために、老人ホームの入居要件に、介護保険の要介護認定(要介護1〜5、要支援1・2)の7段階が必要であるかどうかで、老人ホームを振り分けてみよう。
要介護認定を必要とする老人ホームは、まず介護老人福祉施設(特養のこと)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院といった3種類の介護保険施設が挙げられる。このうち、特養は要介護3以上、老健と介護医療院は要介護1以上という条件がある。この他、認知症の高齢者が少人数で生活する認知症対応型共同生活介護(グループホーム)も要支援2以上が条件だ。つまり、入居するためには事前に要介護認定を受けることが必要となる。
一方、有料老人ホーム、養護老人ホーム、サービス付き高齢者住宅(サ高住)、軽費老人ホーム(ケアハウス)は、入居後に介護保険サービスを利用することはできるが、原則として要介護認定を入居条件とはしていない(一部条件としている施設もある:介護型ケアハウスや介護付き有料老人ホームは要介護認定を必要とするのが一般的など)。
◇ついの住み家かどうか
ついの住み家、すなわち、亡くなるまで居られるかどうかも老人ホーム選びには、重要な視点となる。
介護保険施設3施設のうち、特養と介護医療院は「生活施設」と位置付けられ、ついの住み家のような性格が強い。特養と介護医療院の違いは、前者が要介護度の高い高齢者を、後者が医療依存度の高い高齢者を対象としている点にある。他方、老健は在宅復帰・在宅療養支援を目指す施設である。後ほど詳説する。
グループホームや有料老人ホームなどは、みとりまで行うかどうかが施設によりまちまちだ。終末期(ターミナル)になると退所を求められ、病院への入院が必要となる施設もある。なお、特養の中にも、みとりの対応をしていない施設がある。
◇有料老人ホームの利用料
厚生労働省によると、有料老人ホームとは、食事の提供、介護(入浴・排せつ・食事)の提供、洗濯・掃除などの家事の供与、健康管理のサービスのうち、いずれかのサービス(複数も可)を提供する施設だ。都道府県などへの届け出が必要となる。厚労省の調査では、特養が社会福祉法人や自治体など、老健が医療法人や自治体などと設置主体が限定されているのに対し、有料老人ホームは、株式会社などの営利企業が設置主体となることもできる。
料金設定はフリーであり、介護が受けられる有料老人ホームの場合、総じて介護保険施設よりも高い。また、介護保険施設とは違い、月額利用料のほか、入居一時金が必要な施設も少なくない。入居一時金は数万〜数千万円と大きな幅がある。入居金が0円という施設もあるが、月額利用料が高い傾向がある。
◇有料老人ホームのサービス類型
有料老人ホームのサービス類型は、介護付き、住宅型、健康型の三つだ。
このうち、健康で自立して生活ができる高齢者を対象とした健康型有料老人ホームは数が少ない。また、介護が必要となった場合は退去しなければならないので、ついの住み家になることは難しい。なお、介護付き有料老人ホームを併設し、介護が必要になったらそちらに移るという便を図っている施設もある。
住宅型有料老人ホームは、このところ急激に数を伸ばしている。身体介護サービス以外の食事の提供や家事などの生活支援サービスが付属した施設だ。介護サービスを利用する場合は、自宅にいる場合と同様、入居者自身が地域のケアマネジャーと契約し、訪問介護(ヘルパー)や訪問看護を利用する。
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」というサービス事業所の指定を受けた施設をいう。
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(2024/11/12 05:00)
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