大腿四頭筋肉ばなれ、ハムストリング肉ばなれ〔だいたいしとうきんにくばなれ、はむすとりんぐにくばなれ〕 家庭の医学

 肉ばなれは、筋肉がそれ自身の収縮力や外から加わった強い力によって部分的に断裂した状態をいい、スポーツに伴って起こることが多い外傷です(下腿三頭筋断裂)。ほとんどの場合、断裂は筋肉の一部のみに起こり、筋肉全体が断裂することはきわめてまれです。

 肉ばなれの診断では、症状がどのようにしてあらわれたのかと、圧痛(圧迫したときの痛み)がどこにあるかがポイントになります。スポーツの最中に急に痛みがあらわれ、筋肉に圧痛があり、その筋肉に力を入れようとすると強い痛みが生じる場合は、肉ばなれと考えてまずまちがいありません。
 大腿の場合、前面に痛みがあれば大腿四頭筋の肉ばなれを、後面にあればハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称)の肉ばなれを考えます。前者ではひざを伸ばそうと力を入れたとき、後者ではひざを曲げようとしたときに痛みが生じます。

 肉ばなれでは手術を必要とすることはほとんどありません。けがをした直後には筋肉の断裂部で内出血や組織のはれが生じます。内出血やはれが過度に起こると治りが遅れるので、受傷直後はなるべく安静を心掛けるとともに患部を氷などで冷やし、さらに伸縮性のある包帯などで適度に圧迫して、はれや内出血を最小限に抑えるようにします。受傷直後の長時間の入浴やマッサージは内出血やはれを強めるおそれがあるので、避けるべきです。

 肉ばなれは再発することがあるので、スポーツ復帰はけっしてあせることなく、軽いジョギングなどから始めていき、ダッシュやジャンプなど筋肉の強い収縮を伴う動作は十分肉ばなれが治ってから再開するようにします。また、筋肉の損傷部はかたくもろい組織となって治る傾向があるので、再発予防のためには筋肉のストレッチを無理のない範囲でおこなっていくことも大事です。

(執筆・監修:東京大学大学院総合文化研究科 教授〔広域科学専攻生命環境科学系〕 福井 尚志)
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