下腿三頭筋肉ばなれ〔かたいさんとうきんにくばなれ〕 家庭の医学

 ふくらはぎにある下腿三頭筋には、肉ばなれがよく起こります。
 肉ばなれとは、筋肉がそれ自身の強い収縮力や外から加わった強い力によって部分的に断裂することをいいます。断裂は筋肉全体に起こることはまれで、たいていの場合筋肉の一部のみに起こります。

 肉ばなれの診断では、症状がどのようにしてあらわれたのかと、圧痛(押して痛む場所)がどこにあるかがポイントになります。スポーツの最中にふくらはぎに急に痛みがあらわれ、筋肉に圧痛があり、じっとしていればそれほどではないが、その筋肉に力を入れようとすると強い痛みが生じるという場合は、肉ばなれが起こったと考えてまずまちがいありません。

 肉ばなれの治療は、受傷直後は局所の安静、患部の冷却と圧迫が中心になります。肉ばなれが生じているのに痛みをこらえて無理に歩き回っていると、痛みも強くなるし、回復も遅れがちになります。安静は、単に痛みの問題だけでなく治りを早めるうえでも重要です。このため重症の肉ばなれではギプスで患部を固定することもあります。
 また、受傷直後には筋肉の損傷が起こった部位に、内出血や組織のはれが生じます。患部を冷却し、伸縮性のある包帯などで適度に圧迫すれば、はれや内出血を抑えることができます。痛みが強い場合には痛みどめの薬を服用することもありますが、痛みどめの薬をのみながら痛めた筋肉を無理に使うことは、治りを遅らすことにもなりますので、おすすめできません。そのほか、受傷直後の長時間の入浴、マッサージは内出血やはれを強めるおそれがあるので、避けるべきです。

 肉ばなれを起こした筋肉は、損傷の程度にもよりますが、けがのあと3週間ほどである程度治ってきます。肉ばなれを起こした部分は正常な筋肉にくらべ、かたくてもろい組織で治る傾向があり、このために同じ場所で再度肉ばなれを起こすことが少なくありません。これを防ぐ確実な方法はありませんが、肉ばなれのあとのストレッチが有効ともいわれています。ストレッチは痛みが消えたあと、無理のない範囲からおこないます。
 また、スポーツへの復帰はけっしてあせることなく軽いジョギングなどから始めていき、ダッシュやジャンプなど筋肉の強い収縮を伴う動作は肉ばなれが十分に治ってから徐々に再開するようにします。

(執筆・監修:東京大学大学院総合文化研究科 教授〔広域科学専攻生命環境科学系〕 福井 尚志)
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