創傷の治療 家庭の医学

1.止血:血をとめる
 清潔なタオルやガーゼなどで、出血している部位を直接押さえてください。太い血管が損傷されていなければ、5分くらいの圧迫で出血は少なくなります。

2.洗浄・消毒:傷をきれいにする
 創傷(そうしょう)は、砂・泥などの異物や細菌によって汚染されていることが多いため、縫合などの処置をおこなう前に洗浄と消毒をおこないます。
 医療機関では生理食塩水などで洗浄したあとに、消毒をおこないます。出血が少なく痛みが軽いようなら、受診する前に水道水で砂や泥などを洗っても大丈夫です。
 異物が残ったまま創傷の処置をおこなうと、感染の原因になることがあります。また、傷が治ったあとも異物が皮下に残ってしまい、刺青(いれずみ)のような色素沈着を起こします。

3.創傷の処置
■縫合
 切創や裂創など単純な創傷で、汚染が少ない場合におこないます。外傷の受傷から6~8時間以内なら細菌の繁殖がまだ少ないため、縫合に適しています。頭部や顔面の創傷は受傷後24時間くらいでも縫合をおこなうことがあります。
□方法
 縫合糸を用いることが一般的ですが、浅い創傷の場合は外科用テープで固定することがあります。損傷や汚染が少ない場合は、真皮縫合をおこなうこともあります。
□縫合後の経過
 縫合後の状態がよければ、2~3日たってからシャワー浴を許可することもあります。皮膚を縫合した糸は1~2週間後に抜糸します。縫合したあとの傷あとは線状に治り、ひきつれや変形などの後遺症は軽度です。

■縫合しない治療(保存的治療)
 擦過(さっか)創は縫合しないで治療します。また、受傷から6~8時間たっている創傷は、すでに細菌が繁殖しているため、原則的に縫合しません。
 また、咬創(こうそう)や挫滅(ざめつ)創などは傷が開いたり、感染したりする可能性が高いため、保存的治療をおこないます。
□方法
 一般的には軟膏などの外用薬で治療します。最近では、被覆材(ひふくざい)と呼ばれる特殊な絆創膏を用いることがあります。被覆材には、抗菌力をもつものや、創傷から出る体液を吸収するものがあり、状態によって使い分けます。
 被覆材は創傷表面にくっつきにくいように加工されているため、交換時の痛みや出血が少ないのも長所です。
□治療後の経過
 保存的治療をおこなうと、創傷の周辺にある細胞やコラーゲンが増殖することによって治ります。
 治るまでの期間は傷の大きさや深さによって異なります。擦過創など浅い創傷では1~2週間で治り、ほとんど傷あとが残りません。治るまでに2週間以上かかった創傷は、瘢痕(はんこん)ができて治ります。瘢痕はひきつれや痛み・かゆみなどの症状を起こすことがあります(瘢痕の原因・症状治療法)。

(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)

他の病気について調べる