唇裂〔しんれつ〕
先天性の疾患で、上くちびるに裂け目(裂〈れつ〉)のある状態です。鼻の穴に連なる裂として起こることが多く、両側性に起こることもあります。中央に裂け目の存在するものもありますが、これは正中裂といい、非常にまれです。唇裂・口蓋(こうがい)裂をあわせると、日本では500人に1人くらいの割合で生まれています。
最近では、超音波(エコー)検査によって胎内にいるうちから診断がつくこともふえています。唇裂、口蓋裂だけの異常であれば、妊娠(にんしん)中には特に治療の必要はなく、分娩(ぶんべん)も特に問題ありません。
[原因]
妊娠2~3カ月ころにくちびる・口蓋は形成されますが、この時期の器官形成がうまくいかなかったことが原因です。人種によって発生率が異なることや、親族に唇裂・口蓋裂の人がいる場合、発生率が高くなるといわれていることから、遺伝的な要素があるのではないかと考えられていますが、家族的な背景がなくとも唇裂の赤ちゃんが出生することは多くあります。
また、そのほかにもある種の化学物質や薬剤、栄養素、妊娠中のウイルス感染や放射線被曝なども原因と考えられており、1つの決まった原因は特定されていません。
[症状]
くちびるには口をすぼめる筋肉があり、裂によりこの筋肉の連続性が絶たれています。したがって、哺乳(ほにゅう)や摂食、ことばを話すときに不自由な状態となります。
また、変形はくちびるだけでなく、それとつらなる鼻にも及びます。鼻の変形は、片側性では左右の非対称やゆがみ、両側性では扁平(へんぺい)な鼻となることが多くみられます。
歯ぐきが割れている顎(がく)裂や口の中の天井が割れている口蓋裂を合併することも多く、口の中の診察も重要です。
[治療]
唇裂だけであれば、ふつうの哺乳が可能です。口蓋裂がある場合には、口蓋裂用の特殊な乳首や哺乳床(ホッツ床:プラスチックでできた入れ歯のような形のもの)という口腔内の装置を使って哺乳を助けることもあります。哺乳床は口蓋裂を専門に治療している施設の口腔外科や歯科で作製します。
唇裂に対しては、手術的な治療がおこなわれます。基本的には生後3カ月くらい、体重で5kgを超える程度をめやすとしますが、低出生体重、早産、ほかの合併異常がある場合などはこのかぎりではありません。鼻の変形に対して装具などを使用して変形を矯正(きょうせい)させる方法もありますが、矯正だけで完全に治療することはできず、あくまで補助的な方法です。
唇裂形成術には、切開線のデザインによっていくつかの方法がありますが、切開線のデザインの違いは治療結果に大きく影響しないものと考えられています。片側性の場合は1回の手術で終わりますが、両側性の場合には1回で両側を治療する方法と、2回に分けて左右を別々におこなう方法があります。
また両側性の場合で顎裂、口蓋裂が合併していると、中央のくちびるとあご(歯ぐきの部分)が前方に突出したりねじれたりするため、術前にテープやヘッドキャップなどで矯正することもあります。唇裂形成術の術後には、左右の鼻孔(びこう:鼻の穴)の非対称や扁平、口唇縁のずれ、くちびるの厚さの違いなどの変形が残ることがあります。必要によっては後日、修正手術をおこないます。
唇裂術後のくちびるや鼻の変形に対する修正手術は、多くは小学校入学前におこなわれます。この時期では、口唇縁のずれや目立つ瘢痕(はんこん)の修正、鼻翼(びよく)の軟骨の修正などをおこなうのが一般的です。鼻の扁平がいちじるしい場合や、上くちびるのボリュームにアンバランスがあるときなどは、思春期以降に軟骨・骨移植や皮弁形成術などといった方法で修正をおこなうこともあります。
最近では、超音波(エコー)検査によって胎内にいるうちから診断がつくこともふえています。唇裂、口蓋裂だけの異常であれば、妊娠(にんしん)中には特に治療の必要はなく、分娩(ぶんべん)も特に問題ありません。
[原因]
妊娠2~3カ月ころにくちびる・口蓋は形成されますが、この時期の器官形成がうまくいかなかったことが原因です。人種によって発生率が異なることや、親族に唇裂・口蓋裂の人がいる場合、発生率が高くなるといわれていることから、遺伝的な要素があるのではないかと考えられていますが、家族的な背景がなくとも唇裂の赤ちゃんが出生することは多くあります。
また、そのほかにもある種の化学物質や薬剤、栄養素、妊娠中のウイルス感染や放射線被曝なども原因と考えられており、1つの決まった原因は特定されていません。
[症状]
くちびるには口をすぼめる筋肉があり、裂によりこの筋肉の連続性が絶たれています。したがって、哺乳(ほにゅう)や摂食、ことばを話すときに不自由な状態となります。
また、変形はくちびるだけでなく、それとつらなる鼻にも及びます。鼻の変形は、片側性では左右の非対称やゆがみ、両側性では扁平(へんぺい)な鼻となることが多くみられます。
歯ぐきが割れている顎(がく)裂や口の中の天井が割れている口蓋裂を合併することも多く、口の中の診察も重要です。
[治療]
唇裂だけであれば、ふつうの哺乳が可能です。口蓋裂がある場合には、口蓋裂用の特殊な乳首や哺乳床(ホッツ床:プラスチックでできた入れ歯のような形のもの)という口腔内の装置を使って哺乳を助けることもあります。哺乳床は口蓋裂を専門に治療している施設の口腔外科や歯科で作製します。
唇裂に対しては、手術的な治療がおこなわれます。基本的には生後3カ月くらい、体重で5kgを超える程度をめやすとしますが、低出生体重、早産、ほかの合併異常がある場合などはこのかぎりではありません。鼻の変形に対して装具などを使用して変形を矯正(きょうせい)させる方法もありますが、矯正だけで完全に治療することはできず、あくまで補助的な方法です。
唇裂形成術には、切開線のデザインによっていくつかの方法がありますが、切開線のデザインの違いは治療結果に大きく影響しないものと考えられています。片側性の場合は1回の手術で終わりますが、両側性の場合には1回で両側を治療する方法と、2回に分けて左右を別々におこなう方法があります。
また両側性の場合で顎裂、口蓋裂が合併していると、中央のくちびるとあご(歯ぐきの部分)が前方に突出したりねじれたりするため、術前にテープやヘッドキャップなどで矯正することもあります。唇裂形成術の術後には、左右の鼻孔(びこう:鼻の穴)の非対称や扁平、口唇縁のずれ、くちびるの厚さの違いなどの変形が残ることがあります。必要によっては後日、修正手術をおこないます。
唇裂術後のくちびるや鼻の変形に対する修正手術は、多くは小学校入学前におこなわれます。この時期では、口唇縁のずれや目立つ瘢痕(はんこん)の修正、鼻翼(びよく)の軟骨の修正などをおこなうのが一般的です。鼻の扁平がいちじるしい場合や、上くちびるのボリュームにアンバランスがあるときなどは、思春期以降に軟骨・骨移植や皮弁形成術などといった方法で修正をおこなうこともあります。
(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)
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