甲状腺悪性腫瘍(甲状腺がん、悪性リンパ腫)〔こうじょうせんあくせいしゅよう(こうじょうせんがん、あくせいりんぱしゅ)〕

 甲状腺にできる悪性腫瘍は、がんと悪性リンパ腫があります。がんはさらに、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がんに分けられ、女性に多い傾向があります。
 乳頭がんは甲状腺がんのうち、80~90%を占め、女性に多く幅広い年齢層で発生します。比較的緩慢に経過し、がんが小さい場合は無症状です。甲状腺腫と同様、健康診断で偶然にみつかることもしばしばあります。また、周囲のリンパ節に転移し、そこがはれて甲状腺がんがみつかることも少なくありません。
 甲状腺がんの診断には、触診(かたく触れる)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、超音波(エコー)検査、穿刺(せんし)吸引細胞診(針を刺して細胞を採取する検査)などがあります。大きくなってくると、かたいしこりとして触れたり、がんがさらに進行すると、甲状腺のわきを通る反回神経をまひさせ、声がかすれたり、周囲の気管・食道を圧迫し息苦しさや、飲み込みにくさなどの症状をきたします。
 濾胞がんは、全体の5%前後を占めます。乳頭がん同様、比較的緩慢に進行します。治療は手術で、甲状腺の半分、場合によっては全部を切除します。リンパ節転移があれば、脂肪ごとリンパ節を切除すること(頸部郭清〈かくせい〉術といいます)も必要です。
 髄様がんは、ときどき家族性に発生します。未分化がんは、きわめて悪性度が高く進行も急速です。
 甲状腺の悪性リンパ腫も、急速に増大しますが、治療は、放射線と抗がん薬の併用になります。急なしこりやはれはすぐに医師の診察が必要です。

【参照】
 内分泌・代謝異常の病気:甲状腺がん
 血液の病気:悪性リンパ腫

(執筆・監修:埼玉医科大学 名誉教授 中塚 貴志)
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