性感染症の種類
性行為(オーラルセックスなどの広い範囲の性行為・性的接触を含む)によって媒介される微生物の感染を性感染症(sexually transmitted infection:STI)と呼びます。
かつては、淋病(りんびょう)、梅毒(ばいどく)、軟性下疳(なんせいげかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくげしゅ)の4種類だけが性行為で感染すると考えられており、これらの4疾患を性病(sexually transmitted disease:STD)と呼んでいました。しかし、性的接触で感染する感染症は、ほかにも多く存在することや、エイズ(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症)や子宮頸がん(ヒト乳頭腫ウイルス感染)のように、症状がなくても性的接触を介した感染が原因で発症する疾患があきらかとなり、もっと広い意味で使われるようになっています。性感染症を起こす微生物は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫・原虫など多様で、その種類によって症状や治療法は異なります。
公衆衛生や抗菌薬治療の進歩により、軟性下疳や鼠径リンパ肉芽腫症は、日本では少なくなってきました。しかし、梅毒も1970年代以降になって、大幅に減少したものの、2003年ごろから男女ともに増加傾向に転じています。特に2013年ごろからの報告者数の増加はそれ以前とくらべても顕著であり、報告者数の増加にまったく歯止めがかからない状況が続いており、社会問題になっています。また、かつては男性の同性間性交渉による感染が多かったものの、最近は男女ともに異性間性交渉での感染がおもな感染経路に代わってきています。男性は20代から50代と幅広い年齢で感染が増加しているのに対して、女性は20代(特に20代前半)での感染が突出していることも近年の梅毒感染の特徴です。なお、新規患者数は、2013年に1228人と1000人を超えると、2018年には7007人まで急速に増加しました。2019年、2020年は6642人、5867人と前年比で減少傾向が続きましたが、2021年以降は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の時期であったにもかかわらず、7978人(2021年)と過去最多の報告数を更新し続けており、2023年には15078人の報告数を記録しています。それに伴い、妊婦から新生児に感染する先天梅毒の報告件数も2023年には37人と10年前の約10倍に増加しており、過去最多を更新しています(国立感染症研究所調べ)。また、クラミジア感染症と淋菌感染症も、2002年をピークに減り続けていましたが、2010年以降横ばいからふたたび増加する傾向があり、梅毒同様に新型コロナ感染症が猛威を振るった2020年以降も減少傾向がみられていないため注意が必要です。
かつては、淋病(りんびょう)、梅毒(ばいどく)、軟性下疳(なんせいげかん)、鼠径(そけい)リンパ肉芽腫(にくげしゅ)の4種類だけが性行為で感染すると考えられており、これらの4疾患を性病(sexually transmitted disease:STD)と呼んでいました。しかし、性的接触で感染する感染症は、ほかにも多く存在することや、エイズ(AIDS、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症)や子宮頸がん(ヒト乳頭腫ウイルス感染)のように、症状がなくても性的接触を介した感染が原因で発症する疾患があきらかとなり、もっと広い意味で使われるようになっています。性感染症を起こす微生物は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫・原虫など多様で、その種類によって症状や治療法は異なります。
公衆衛生や抗菌薬治療の進歩により、軟性下疳や鼠径リンパ肉芽腫症は、日本では少なくなってきました。しかし、梅毒も1970年代以降になって、大幅に減少したものの、2003年ごろから男女ともに増加傾向に転じています。特に2013年ごろからの報告者数の増加はそれ以前とくらべても顕著であり、報告者数の増加にまったく歯止めがかからない状況が続いており、社会問題になっています。また、かつては男性の同性間性交渉による感染が多かったものの、最近は男女ともに異性間性交渉での感染がおもな感染経路に代わってきています。男性は20代から50代と幅広い年齢で感染が増加しているのに対して、女性は20代(特に20代前半)での感染が突出していることも近年の梅毒感染の特徴です。なお、新規患者数は、2013年に1228人と1000人を超えると、2018年には7007人まで急速に増加しました。2019年、2020年は6642人、5867人と前年比で減少傾向が続きましたが、2021年以降は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の時期であったにもかかわらず、7978人(2021年)と過去最多の報告数を更新し続けており、2023年には15078人の報告数を記録しています。それに伴い、妊婦から新生児に感染する先天梅毒の報告件数も2023年には37人と10年前の約10倍に増加しており、過去最多を更新しています(国立感染症研究所調べ)。また、クラミジア感染症と淋菌感染症も、2002年をピークに減り続けていましたが、2010年以降横ばいからふたたび増加する傾向があり、梅毒同様に新型コロナ感染症が猛威を振るった2020年以降も減少傾向がみられていないため注意が必要です。
(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学講座 講師 亀井 潤)
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