性感染症のうつりかた 家庭の医学

 性感染症は、もっぱら性行為を介して感染し発症します。この性行為には、腟(ちつ)性交だけでなく、肛門性交や、オーラルセックス(フェラチオ、クンニリングス)なども含まれます。

 また、妊娠している女性が性感染症にかかっていると、おなかの中の胎児や新生児に感染する(母子感染)こともあります。
 細菌やウイルスなどの病原体は、性感染症に感染している人の体液(唾液、精液、腟分泌液、血液など)や患部などに含まれており、性行為をする相手の性器、肛門、口などの皮膚や粘膜と接触することで感染します。クラミジアや淋菌は性器や粘膜に感染しますが、HIV感染やB型肝炎ウイルスは、性行為によって性器や肛門の粘膜にできた小さな傷から体液を介して感染します。
 最近では、性戯(せいぎ)、性風俗の多様化から、オーラルセックスを介してクラミジアや淋菌が性器だけでなく、のどに感染(咽頭感染:いんとうかんせん)することも少なくありません。場合によっては、眼に感染し、結膜炎を発症することもあります。
 性感染症に感染していると、性器などの皮膚や粘膜に潰瘍や炎症が生じて、皮膚や粘膜から出血しやすくなります。そのため他の性感染症にもかかりやすくなり、結果として同時に複数の性感染症に感染することもあります。
 性行為をする人たちの間に感染したまま治療を受けない人がいると、性感染症の被害はどんどん拡大してしまいます。また、性感染症の症状が出た人が治療を受けても、そのパートナーが感染していると、治療後にそのパートナーと性交渉すればふたたび感染してしまいます。
 もともとの感染源の人がパートナーに感染させ、そのパートナーが未治療のままにしていると、感染源の人が治療を受けたとしても今度はパートナーが感染源の人を感染させてしまうことになります。この状況は、卓球でピンポン球を打ち合う様子を連想させることから、ピンポン感染とも呼ばれます。このピンポン感染を防ぐためには、どちらかに症状が出た場合は、一方だけが治療を受けるのではなく、2人同時に治療を行うことが大切です。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 泌尿器外科学講座 講師 亀井 潤)
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