ガス中毒〔がすちゅうどく〕
ガス中毒は、一酸化炭素、プロパンガス、硫化水素、塩素ガスの順で、日本中毒情報センターの相談件数が多くみられます。頻度の高いガス中毒の特徴を表に示します。ガス中毒の手当て
□一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒は、中毒の死亡原因としては最大頻度を占めます。不完全燃焼によって発生するため、火災現場の事故死や、練炭による自殺例が多くみられます。無色、無臭、無刺激性であるため、気づかれないうちに、意識をなくして、犠牲になることも多いガスです。
毒性としては、血液中で酸素を組織に輸送する血色素・ヘモグロビンとの結合性が、一酸化炭素は、酸素よりも250倍強いため、細胞・組織における酸素不足を生じることによります。症状は、ヘモグロビンと一酸化炭素の結合性を評価する、一酸化炭素ヘモグロビンの測定を実施します。頭痛から意識障害、けいれん、昏睡に至る中枢神経症状が主体です。また、循環症状では、心筋細胞の酸素不足や不整脈、収縮力低下などをきたします。そのほか、ガス曝露後、数週間ほど経過してから、再度意識状態が低下する、慢性期の合併後遺症をきたすこともあります。
現場では換気につとめ、新鮮な空気を吸入させるとともに、頭痛や意識障害があきらかな場合は、躊躇(ちゅうちょ)なく、救急車を要請します。病院では、搬送中からヘモグロビンと結合した一酸化炭素を凌駕(りょうが)する、高濃度酸素の投与や、場合によって人工呼吸管理、高気圧酸素療法を実施することがあります。
□硫化水素中毒
硫化水素中毒は、偶発性の事故としても、自殺の手段としても、報告例が散見されます。硫化水素ガス中毒は、硫黄泉などで自然に発生したり、石油精製過程や染料工場での偶発性事故で発生したりするほか、昨今では、入浴剤と洗浄剤を混入させて、故意に硫化水素を発生させる自損行為手段としての報告がみられます。
いわゆる“腐った卵のにおい”がしますが、高濃度では、“ノックダウン現象”といわれる、数回の呼吸で、昏睡から心呼吸停止に至る、強い毒性があらわれます。硫化水素の毒性は、細胞レベルにおいて、酸素摂取を阻害して、細胞内窒息にするほか、脳幹への直接的な作用によって、呼吸停止、昏睡をきたします。また、直接的な心筋障害、伝導障害をきたします。
現場での注意として、異臭を感じたら、救急車の要請と同時に、警察への通報を優先してください。絶対に現場内には入らず、現場の外側から、窓の開放、換気をおこないます。安易に現場に救出に入ると、自分自身が犠牲者となるリスクがあることを、よく覚えておく必要があります。
病院での治療についても、対症療法が中心であり、亜硝酸酸剤を用いた治療が実施されることもありますが、効果については定まっていません。
□塩素中毒
塩素中毒は、しばしば、漂白剤やカビ取り剤と強酸を含有した洗浄剤との混合でみられることがあります。鼻腔(びくう)・口腔?気管粘膜に至るまで、粘膜の刺激症状のほか、眼の灼熱感、流涙(りゅうるい)などの角・結膜刺激症状、呼吸困難、遅発性に生じる肺水腫などが、中毒症状としてみられることがあります。
病院でも、対症療法しかなく、人工呼吸管理を要することがあります。現場では、救助者が巻き込まれないように、十分な換気が必要です。
ガスの特徴 | 主たる毒ガスの発生機序 | 症状 | 応急処置と病院受診基準 | |
---|---|---|---|---|
一酸化炭素 | 無臭、無色、無刺激性 | 火災現場の不完全燃焼 練炭事故 | 頭痛、意識障害、けいれん、昏睡 | 現場の換気、高濃度酸素投与、救急車要請 |
硫化水素 | タマゴが腐ったにおい、無色 | 鉱山や石油精製施設の事故 入浴剤+塩酸混入 | ノックダウン現象、めまい、せん妄、昏睡、呼吸停止、ショック | 2次被害の危険性があり、現場に独断で入っていかずに警察・消防に通報 むやみに近づかない、外から換気 |
塩素ガス | 黄緑色、刺激臭 | カビ取り剤・漂白剤と酸の混合 | 目、鼻、咽頭刺激症状、呼吸器症状、肺水腫 | 現場の換気、目の洗浄 |
□一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒は、中毒の死亡原因としては最大頻度を占めます。不完全燃焼によって発生するため、火災現場の事故死や、練炭による自殺例が多くみられます。無色、無臭、無刺激性であるため、気づかれないうちに、意識をなくして、犠牲になることも多いガスです。
毒性としては、血液中で酸素を組織に輸送する血色素・ヘモグロビンとの結合性が、一酸化炭素は、酸素よりも250倍強いため、細胞・組織における酸素不足を生じることによります。症状は、ヘモグロビンと一酸化炭素の結合性を評価する、一酸化炭素ヘモグロビンの測定を実施します。頭痛から意識障害、けいれん、昏睡に至る中枢神経症状が主体です。また、循環症状では、心筋細胞の酸素不足や不整脈、収縮力低下などをきたします。そのほか、ガス曝露後、数週間ほど経過してから、再度意識状態が低下する、慢性期の合併後遺症をきたすこともあります。
現場では換気につとめ、新鮮な空気を吸入させるとともに、頭痛や意識障害があきらかな場合は、躊躇(ちゅうちょ)なく、救急車を要請します。病院では、搬送中からヘモグロビンと結合した一酸化炭素を凌駕(りょうが)する、高濃度酸素の投与や、場合によって人工呼吸管理、高気圧酸素療法を実施することがあります。
□硫化水素中毒
硫化水素中毒は、偶発性の事故としても、自殺の手段としても、報告例が散見されます。硫化水素ガス中毒は、硫黄泉などで自然に発生したり、石油精製過程や染料工場での偶発性事故で発生したりするほか、昨今では、入浴剤と洗浄剤を混入させて、故意に硫化水素を発生させる自損行為手段としての報告がみられます。
いわゆる“腐った卵のにおい”がしますが、高濃度では、“ノックダウン現象”といわれる、数回の呼吸で、昏睡から心呼吸停止に至る、強い毒性があらわれます。硫化水素の毒性は、細胞レベルにおいて、酸素摂取を阻害して、細胞内窒息にするほか、脳幹への直接的な作用によって、呼吸停止、昏睡をきたします。また、直接的な心筋障害、伝導障害をきたします。
現場での注意として、異臭を感じたら、救急車の要請と同時に、警察への通報を優先してください。絶対に現場内には入らず、現場の外側から、窓の開放、換気をおこないます。安易に現場に救出に入ると、自分自身が犠牲者となるリスクがあることを、よく覚えておく必要があります。
病院での治療についても、対症療法が中心であり、亜硝酸酸剤を用いた治療が実施されることもありますが、効果については定まっていません。
□塩素中毒
塩素中毒は、しばしば、漂白剤やカビ取り剤と強酸を含有した洗浄剤との混合でみられることがあります。鼻腔(びくう)・口腔?気管粘膜に至るまで、粘膜の刺激症状のほか、眼の灼熱感、流涙(りゅうるい)などの角・結膜刺激症状、呼吸困難、遅発性に生じる肺水腫などが、中毒症状としてみられることがあります。
病院でも、対症療法しかなく、人工呼吸管理を要することがあります。現場では、救助者が巻き込まれないように、十分な換気が必要です。
(執筆・監修:筑波大学附属病院救急・集中治療科 教授 井上 貴昭)
他の病気について調べる
-
病名から医師を探す
「ドクターズガイド」はこちら » - 総合診療科に所属する医師はこちら »
- 救急医療科に所属する医師はこちら »
- 消化器科に所属する医師はこちら »
- 感染症科に所属する医師はこちら »
- 神経科に所属する医師はこちら »
- 精神科に所属する医師はこちら »
- 呼吸器科に所属する医師はこちら »
- 呼吸器外科に所属する医師はこちら »
- 皮膚科に所属する医師はこちら »