覚醒剤、麻薬、その他興奮薬〔かくせいざい、まやく、そのたこうふんやく〕

 表に、薬物事犯別検挙件数の推移を示します。これら乱用薬品においては、圧倒的に覚醒剤が多いことがわかります。中毒患者数を反映すると考えられますが、数値的にはわずかに減少傾向にあります。
 いっぽう、以下に示すように、危険ドラッグ乱用者検挙人員数は増加傾向にあります。危険ドラッグとは、規制薬物(覚醒剤、大麻、麻薬、向精神薬、あへん、けしがら)や法律上定められた指定薬物に化学構造を似せてつくられ、これらと同様の薬理作用を有する物品をいいます。これまで法的規制が困難でしたが、さまざまな法令を駆使して検挙数がふえてきています。

●薬物事犯別検挙件数
年別2011年2012年2013年2014年 2015年
覚醒剤事犯検挙件数16,800 16,362 15,232 15,355 15,980
大麻事犯検挙件数2,287 2,220 2,086 2,362 2,771
麻薬および向精神薬事犯検挙件数564 526 862 637 706
あへん事犯検挙件数16 8 11 24 6
検挙件数合計19,667 19,116 18,191 18,378 19,463
(警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課)


●危険ドラッグ乱用者年齢別検挙人員
年別2014年 2015年
危険ドラッグ乱用者検挙人員合計631人966人
50歳以上(%)44人(7.0)75人(7.8)
40~49歳(%)121人(19.2)236人(24.4)
30~39歳(%)204人(32.3)330人(34.2)
20~29歳(%)236人(37.4)297人(30.7)
20歳未満(%)26人(4.1)28人(2.9)
(警察庁刑事局組織犯罪対策部薬物銃器対策課)


□覚醒剤
 覚醒剤は、メタンフェタミン、アンフェタミン類に代表される中枢神経興奮薬です。水溶性であり、注射が容易で、経静脈的投与が通常なされます。一時的に気分高揚、多幸感、疲労感減少、無食欲症状をきたしますが、交感神経刺激作用により、散瞳(さんどう)、紅潮、発汗過多、動悸(どうき)を生じます。過量になると、けいれん、高血圧、ショック症状を呈するほか、腎不全、肝不全、血液凝固障害などの臓器症状を呈して致命的となることがあります。特異的治療法はなく、対症療法および精神科医の介入を要します。覚醒剤取締法により、その不法所持が罪に問われます。

□麻薬
 麻薬は、モルヒネやヘロインに代表される中枢神経抑制薬です。モルヒネは皮下注、筋注、経口摂取がなされ、がん性疼痛(とうつう)など、一部は医療用としても用いられます。ヘロインは吸収性に富み、鼻腔内、皮下注、静注などで摂取され、その吸収力は高く、効果も強いとされています。意識障害、呼吸抑制、縮瞳(しゅくどう)の3症状を特徴的とするほか、悪心、嘔吐、便秘といった消化器症状が特徴的にみとめられます。呼吸抑制・呼吸停止、非心原性肺水腫により死亡することもあります。
 対症療法に加えて、拮抗薬としてナロキソンが有効です。日本とくらべて麻薬中毒者が多いアメリカでは、アメリカ心臓協会が公表している心肺蘇生ガイドラインにおいても、麻薬過量摂取が判明している患者の致死的緊急事態に対して、ナロキソンの筋注ないし経鼻投与を推奨しています。
 麻薬取締法により、麻薬および向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤などの取締りと、麻薬中毒者の通報義務が定められています。

□大麻
 大麻は、マリファナに代表される幻覚剤です。大麻草の花や葉を乾燥させた乾燥大麻、樹液を圧縮した大麻樹脂、これらを溶剤で溶かした液体大麻として存在します。諸外国では合法としている国もありますが、日本では大麻取締法によって所持、栽培、輸出入、中毒患者の取り扱いなどが定められています。陶酔感、多幸感、不安の軽減から、恐怖感、錯乱、幻覚・妄想、精神的興奮などの精神症状が前面に出ますが、頻脈、期外収縮、ショックなどの循環症状も高頻度にみられます。特異的治療法はなく、対症療法、精神科的介入が主となります。覚醒剤や麻薬にくらべて、致命的な状態になることは少ないとされています。

●幻覚薬・興奮薬
分類(主たる成分)おもな投与経路精神症状全身症状治療法規制する法律
覚醒剤(メタンフェタミン、アンフェタミン)経静脈的気分高揚、多幸感、無食欲〜けいれん、散瞳、発汗過多ショック、腎不全、肝不全、血液凝固能異常、多臓器障害対症療法覚醒剤取締法
麻薬(モルヒネ、ヘロイン)皮下注・筋注、鼻腔投与、経口投与は力価が低い縮瞳、めまい、傾眠、せん妄、昏睡悪心、嘔吐、便秘、非心原性肺水腫、低血圧など対症療法+拮抗薬(ナロキソン)麻薬取締法
大麻(マリファナ)喫煙・吸入、経口摂取陶酔感、多幸感〜食欲亢進、錯乱、幻覚・妄想、精神的興奮頻脈、期外収縮、ショックなど対症療法大麻取締法