自然毒中毒〔しぜんどくちゅうどく〕 家庭の医学

 植物では、青梅(アミオダロン)、ギンナン、スイセンなどの報告事例がみられます。ギンナンなど、通常に摂食する食品でも、過量摂取では、ビタミンB欠乏症状をひき起こし、けいれんや呼吸困難などの症状をきたすおそれがあります。頻度の高い自然毒中毒を表に示します。
 キノコ中毒は、山間部を中心にいまだ報告例があとを絶ちません。なかでもドクツルタケ、シロタマゴテングタケ、タマゴテングタケは、致死率の高い毒キノコとされており、キノコ中毒による死亡事故の90%を占めるといわれています。いただきものでも、キノコに詳しくない素人判断で、摂食することは避ける必要があります。
 魚介類では、フグ、シガテラ魚、まひ性貝類などの報告例がみられます。フグ毒は、歴史的には、フグ調理師免許制が導入されて以来、減少傾向にあります。しかし、やはり無免許者や素人による調理のために、呼吸筋まひによる死亡事例も、いまだみられます。
 そのほか、マムシ、ヤマカガシ、ハブなどの毒蛇による咬傷(こうしょう)がわが国でも山間部を中心にみられます。治療として、特異的抗毒素や創部切開を要することがあり、病院受診を必要とします。動植物によるけが

●おもな自然毒中毒
植物毒
毒をもつ
動植物
誤認されやすい
なかま
毒性接触後作用
発現時間
対応
トリカブトモミジガサ、ニリンソウなどの野草心臓、神経毒性、不整脈2時間すみやかに受診。集中治療を要する
ギンナン過量摂食時(年齢の数がめやす)けいれん、呼吸困難1~12時間すみやかに受診。対症療法
ドクゼリセリ神経毒性、けいれん15~60分すみやかに受診。集中治療を要する
スイセンニラ、ノビル消化器症状、神経症状(流涎、発汗、頭痛、昏睡)、接触性皮膚炎など30分すみやかに受診。対症療法。
青梅モモ、アンズ青酸配糖体(アミグダリン)含有青酸カリと同様症状15分~2時間すみやかに受診。集中治療を要する
キノコ毒
毒をもつ
キノコ
誤認されやすい
なかま
毒性接触後作用
発現時間
対応
ドクツルタケマッシュルームコレラ様症状、激しい下痢6~12時間すみやかに受診。集中治療を要する
ツキヨタケシイタケ胃腸症状、水溶性下痢30分~3時間すみやかに受診。対症療法
ベニテングタケタマゴタケ神経毒、けいれん、めまい20~60分すみやかに受診。集中治療を要する
ドクササコシメジ手指・足趾の激しい疼痛2~4日すみやかに受診。神経ブロック
魚介類
毒をもつ魚介毒性接触後作用
発現時間
対応
フグ卵巣、腸、肝臓に毒性(テトロドトキシン)神経毒、しびれ、呼吸筋まひ1時間以内すみやかに受診。集中治療を要する
シガテラ毒魚ドクウツボ、オニカマス消化器、神経症状数日以内すみやかに受診。対症療法
ヒスタミンが蓄積した魚ヒスタミンを高濃度に蓄積するマグロ、サバ、カツオ消化器症状、蕁麻疹(じんましん)数分~数時間すみやかに受診。対症療法
まひ性貝まひ性貝毒によって毒化したホタテ、アサリ、ハマグリなど口唇・舌、顔面しびれ30分~数時間すみやかに受診。対症療法


(執筆・監修:筑波大学附属病院救急・集中治療科 教授 井上 貴昭)