胃粘膜下腫瘍 家庭の医学

解説
 胃がんは通常、胃の粘膜から発生し、進行するにつれて胃壁の深層にひろがっていきます。いっぽうで、胃の粘膜以外の層から発生する腫瘍は「胃粘膜下腫瘍」と総称されます。バリウムを用いたX線検査や内視鏡検査では、粘膜下腫瘍は粘膜そのものの病変ではなく、粘膜が下から押し上げられるようななだらかな隆起として観察されます。このため、粘膜自体は一見正常に見えるのが特徴です。
 胃粘膜下腫瘍の代表的なものには、筋肉層から発生する「消化管間質腫瘍(GIST)」や、リンパ組織から発生する「胃悪性リンパ腫」があります。胃粘膜下腫瘍は、正常な粘膜でおおわれているため、内視鏡で組織を採取しても診断に十分なサンプルが得られないことがあります。この場合、超音波内視鏡(EUS)やCTスキャンを用いて、腫瘍の大きさ、深さ、血流などの特徴を評価することが重要です。また、大きくなってきたものなどでは必要に応じてEUS下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)をおこない、確定診断を目指します。
 悪性の疑いのあるものの場合は切除や放射線治療などが検討されます。

(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)