スウェーデン・Ilya Pharma AB社/Uppsala UniversityのEmelie Öhnstedt氏らは、創部にケモカインCXCL12を発現する乳酸菌Limosilactobacillus reuteri由来の難治性創傷治療薬候補ILP100-Topicalの第Ⅰ相(first-in-human)試験SITU-SAFEを実施。25~45歳の健康な被験者36例の上腕に実験的に形成した切開創の治癒に対する効果を評価した結果、ILP100-Topicalの局所投与は安全性および忍容性が高く、生理食塩水またはプラセボと比べて創傷治癒を有意に促進したとeClinicalMedicine2023; 60: 102014)に発表した。

創感染はプラセボ群と差なし

 SITU-SAFE試験は、単回投与用量漸増試験(SAD)および反復投与用量漸増試験(MAD)の2部構成。

 SADでは、3種類の用量コホートに各4例、計12例を組み入れた。被験者の左右上腕に各2カ所の実験的切開を加えて計48創を形成し、ILP100-Topicalまたはプラセボを単回投与する群に1:1でランダムに割り付けて治療した。

 MADでは、3種類の用量コホートに各8例、計24例を組み入れ、被験者の左右上腕に各4創、計192創を形成。ILP100-Topical群、生理食塩水群、プラセボ群に4:2:2でランダムに割り付けて3週間治療した(計10回投与)。

 解析の結果、全ての被験者においてILP100-Topicalの単回投与および反復投与は安全で、忍容性が高かった。重篤な有害事象、有害事象による投与中止、CXCL12の全身曝露は認められなかった。ILP100-Topical最高用量群で創部および周囲皮膚に一過性の炎症が高頻度に見られたが、創感染の発生率はILP100-Topical群、生理食塩水群、プラセボ群で差がなかった。

32日目に創傷治癒76%、プラセボより6~10日早く治癒

 MADの全コホートのプール解析では、生理食塩水群とプラセボ群を合わせた対照群に比べ、ILP100-Topical群で治療32日目における創傷治癒の割合が有意に多かった(59% vs. 76%、P=0.020)。

 また、ILP100-Topical群では対照群と比べ、最初に3人の評価者全員により治癒と判定される(完全治癒)までの期間が有意に短く、平均で6日(P=0.039)、最高用量で10日(P=0.0046)短縮された。

 さらに、SADのILP100-Topical最高用量群では、創部においてCXCL12を発現している細胞の平均値(±標準誤差)が対照群と比べて59%増加していた(1,018±134 vs. 1,623±315)。

 以上を踏まえ、Öhnstedt氏らは「『急性創傷の治癒が1~2日短縮』または『糖尿病患者における難治性潰瘍の治癒が標準治療と比べて10~15%増加』というのが、臨床的に意味があり米食品医薬品局(FDA)による承認の要件を満たすとされていることを考えれば、今回の結果は臨床的に極めて重要。難治性創傷に対する治療薬としてのILP100-Topicalの継続的な臨床開発を支持するものだ」と結論している。

(太田敦子)