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インフルエンザ、注射にプラスして予防効果のある方法とは 浦島充佳・東京慈恵会医科大学教授

 今年もインフルエンザが心配な季節になってきました。予防注射をされた方も増えていると思います。それにしても、毎年、予防が叫ばれるのに、流行してしまいます。疫学の専門家である、東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授にお話を伺いました。

インフルエンザが流行した2015年冬の香港の病院(EPA時事)


 海原 浦島先生は臨床家であり、ハーバード大学に留学して感染症予防の疫学的な研究もされました。そうした経験を含め、今回は疫学的な側面と日常生活の中でのインフルエンザ予防についてお聞きしたいと思います。最初に、先生の発表したビタミンDとインフルエンザ予防の関係についてお願いします。

 浦島 米国のデータになりますが、人々のビタミンDの血中濃度は以前に比べて下がっています。論文によれば半数以上が不足状態にあります。日本もそれに近い可能性があります。特に冬場は日射量が少なく、日照時間も短い上、洋服を着込んで、マスクなどをすれば、日にほとんど当たらないので、ビタミンDは夏場のおよそ半分になります。

 海原 女性は日焼けを避けますから、1年を通して日焼け止めを塗っている方が多いですね。また日照時間が少ない北海道や東北にお住いの方は、日に当たる時間が短くなりがちです。ビタミンDは、皮膚が太陽の紫外線を受けることで皮下脂肪から合成されますから、日に当たる機会が少ないと、合成することができず、血中濃度は必然的に低下しますね。

 ◇ビタミンD不足は危険

 浦島 ビタミンDは気道粘膜に作用して、ディエンシンというタンパクを分泌させます。これが天然の抗インフルエンザ薬として作用し、インフルエンザウイルスの気道粘膜への感染を防ぎます。冬、ビタミンDの血中濃度が下がると、ディエンシン分泌が低下し、インフルエンザウイルスの感染を許してしまうというメカニズムです。私たちの研究グループは、ビタミンDのサプリメントがインフルエンザの発症を半分近くに抑制することを、二重盲検ランダム化比較試験という手法を用いて証明しました。

 海原 先生が2010年にAmerican Journal of Clinical Nutritionに発表された論文ですね。ビタミンDを投与した167人のうちインフルエンザAを発症したのは18人(10.8%)だったのに対し、プラセボ(偽薬)では167人中31人(18.6%)が発症しビタミンDはインフルエンザAの発症を42%抑制したというものですね。

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