相次ぐマイナンバーカードのトラブルを受け、政府は国民の不安払拭(ふっしょく)に全力を挙げる。現行の健康保険証は、「マイナ保険証」への一本化に伴い2024年秋で廃止方針だが、岸田文雄首相は25年秋までの猶予期間を強調。今秋にも取り沙汰される衆院解散・総選挙などをにらみ、廃止時期に柔軟な姿勢を示すことで、事態の沈静化を図りたい考えだ。
 「国民の不安を重く受け止めており、保険証の全面的廃止は、不安を払拭するための措置の完了が大前提だ」。首相は21日の記者会見で、廃止までに政府として万全の対策を取ると約束した。
 この発言について、首相周辺は「25年秋までに不安を払拭できないなら延期するつもりで取り組むということだ」と解説。実際、事前の打ち合わせ段階では「国民の不安が払拭できなければ延期する」と踏み込む案もあったという。
 報道各社による最近の世論調査で、岸田内閣の支持率は軒並み下落。マイナカードのトラブル続出が影響したとの見方がもっぱらで、政府・与党内には「政府を挙げて取り組まないといけない課題だ」(政権幹部)との危機感が急速に広がっている。
 政府は21日、マイナカードの登録情報を総点検する「マイナンバー情報総点検本部」を立ち上げ、混乱収拾に乗り出した。しかし、国民の不安が払拭されたと、いつどうやって判断するのか、政府は具体的に説明していない。
 松野博一官房長官は22日の会見で、判断時期は24年秋と25年秋のどちらか問われたが、明言を避けた。
 後手に回る政府対応に、野党は批判を強めている。立憲民主党の長妻昭政調会長は会見で「(総点検本部は)今やっていることをなぞるだけだ。本気ではない。『看板に偽りあり』だ」と断じた。 (C)時事通信社