大規模かつさまざまな患者を含む実臨床データは、臨床試験のエビデンスを補完するツールとして魅力的だが、ランダム化されていないために交絡の影響を受けやすい。そこで最近、ランダム化比較試験(RCT)のデザインを適用して観察データを処理するtarget trial emulation(TTE)という手法が注目されている。オーストラリア・OPAL Rheumatology社のClaire T. Deakin氏らはこの手法を用いて、新規にアダリムマブ(ADA)またはトファシチニブ(TOF)を開始した関節リウマチ(RA)患者で治療効果を比較。両薬の治療効果は同等であることがあらためて示されたとJAMA Netw Open2023; 6: e2320851)に報告した。

新規薬剤開始約840例のデータを抽出

 TOFがADAに対して非劣性であることはRCTで示されており、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインでも両薬は同等に位置付けられている。しかし、生物学的製剤(bDMARD)または分子標的型合成抗リウマチ薬(tsDMARD)の使用歴がない患者で両薬を比較した観察研究は存在しない。

 Deakin氏らは、オーストラリア全土のリウマチ性疾患患者21万例超(うちRAは5万2,338例)の電子カルテを集積したOPALデータセットから、①bDMARDまたはtsDMARDの使用歴がない18歳以上のRA患者、②2015年10月~21年4月にADA(14日ごとに40mg)またはTOF(連日10mg)を新規に開始、③ベースラインまたは追跡中のC反応性蛋白(CRP)に基づく28関節疾患活動性スコア(DAS28-CRP)が記録されている―に該当する842例を抽出。

 主要評価項目は推定平均治療効果とし、治療開始から3、9カ月後におけるADA群に対するTOF群の平均DAS28-CRP差と定義。DAS28-CRPの欠測値は多重代入法により補完した。また、非ランダム化データであることを考慮し、stable balancing weights(SBW)という重み付けを適用した。

両薬剤とも3カ月で寛解レベル達成

 842例の内訳は、ADA群が569例(女性68.0%、年齢中央値56歳)、TOF群が273例(同73.6%、59歳)だった。

 SBW適用後の平均DAS28-CRPは、ベースライン、3カ月後、9カ月後の順に、ADA群がそれぞれ5.3(95%CI 5.2~5.4)、2.6(同2.5~2.7)、2.3(同2.2~2.4)で、TOF群が5.3(同5.2~5.4)、2.4(同2.2~2.5)、(同2.1~2.4)だった。

 平均DAS28-CRP差は、3カ月後には-0.22(95%CI -0.36~-0.03、P=0.02)とTOF群で有意に大きかったが、9カ月後には-0.03(同-0.19~0.10、P=0.56)と消失した。

 Deakin氏らは「ADA治療患者と比べTOF治療患者のDAS28-CRPは、治療開始3カ月後には統計学的に若干有意に低下したが、9カ月後には差がなかった。両薬とも、3カ月間の治療により平均DAS28-CRPは臨床的に有意に低下し、寛解の基準(2.6以下)に収まった」と結論している。

※ Optimising Patient Outcomes in Australian Rheumatology

(小路浩史)