環境省の有識者検討会は25日、発がん性などの健康被害が疑われる有機フッ素化合物「PFAS」について、体内への蓄積量を調べるための血液検査の規模を拡充する方針を大筋で了承した。同省はこれまで血中モニタリング調査を試行的に実施してきたが、本格調査に格上げし、対応策を検討する。調査の具体的な規模や開始時期などは今後詰める。
 同省が2021年度、関東・甲信越、中国・四国、九州・沖縄の地域住民計119人を対象に実施したモニタリング調査では、PFASの代表物質「PFOS」と「PFOA」の平均血中濃度を検査。その結果、血液1ミリリットル当たり計6.1ナノグラム(ナノは10億分の1)だった。
 これに対し、市民団体が東京・多摩地域などの住民に実施した血液検査では、血中から同省の調査より高い値が検出され、健康への影響を不安視する声が出ていた。
 検討会では、PFASに関する国民向けの解説集もまとめた。この中では、血液検査について「現時点では、どの程度の血中濃度でどのような健康影響が生じるか明らかでない」との見解を示し、冷静な対応を呼び掛けている。また「PFASの摂取が主たる要因とみられる健康被害は確認されていない」とも強調した。
 PFASは水や油をはじく特性があり、かつてはフライパンの表面加工など幅広い生活用品に使われてきたが、発がん性リスクの可能性などが指摘され、PFOSとPFOAの製造や輸入、使用が21年までに禁止された。ただ、一部地域の地下水などからは高濃度のPFASが検出されている。 (C)時事通信社