医薬品医療機器総合機構(PMDA)は昨日(7月27日)、2型糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬およびその配合薬の副作用として報告されている類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、投与を中止するなどの適切な処置を行うよう注意喚起を行った。類天疱瘡の出現までの期間は、投与開始早期から数年後まで幅広いことから、長期にわたり注意する必要がある(関連記事「薬疹を起こしやすい意外な薬剤、対処法は?」「DPP-4による類天疱瘡の関連新遺伝子発見」)。

天疱瘡の初期症状出現後の投与継続で入院例を確認

 DPP-4阻害薬の添付文書の「重大な副作用」の項には、「類天疱瘡(頻度不明)」の記載があり、「水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと」と注意喚起がなされている。しかしPMDAによると、DPP-4阻害薬の投与例で、類天疱瘡の初期症状である皮膚の異常が確認されたにもかかわらず投与が継続されて症状が悪化し、入院に至った事例が確認されたという。そのため、DPP-4阻害薬の使用中に、瘙痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらんなどが現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合は、速やかに皮膚科医と相談し、同薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、改めて注意を促した。

 DPP-4阻害薬による類天疱瘡の副作用報告数については、企業報告数は2018年をピークに減少している一方、医療機関報告数は増加傾向にある。年度別に見ると、企業報告は2015年は25件、16年は341件、17年は264件、18年は351件、19年は266件、20年は164件、21年は138件、22年は130件。医療機関報告は、それぞれ1件、8件、6件、14件、12件、19件、17件、19件となっている。

 PMDAは代表的な類天疱瘡出現例として、70歳代男性の事例を紹介した。シタグリプチン投与開始後、3、4カ月目に水疱が出現し、自然軽快を繰り返したものの、7カ月目に水疱が多発して全身に広がったため、8カ月目にクリニックを受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡との診断を受け入院。治療により改善しプレドニゾロンを減量の上、9カ月目に退院したが再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行も薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後に水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。

 国内で販売されているDPP-4阻害薬は、①アナグリプチン含有製剤(商品名スイニー錠、メトアナ配合錠LD、同配合錠HD)、②アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD、同配合錠HD)、③オマリグリプチン(マリゼブ錠)、④サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)、⑤シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)、⑥テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠、カナリア配合錠)、⑦トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)、⑧ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD、同配合錠HD)、⑨リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP、同配合錠BP)ーがある。

(小沼紀子)