天疱瘡〔てんぽうそう〕 家庭の医学

 健康な皮膚面に突然大きな弛緩(しかん)性の水疱(すいほう)が発生してくるもので、しだいに全身にひろがっていきます。かゆみはありませんが、治りにくい病気です。中年以後の男女に多くみられ、小児はまれです。次のような臨床型があります。

■尋常性天疱瘡
 水疱はやわらかくて破れやすく、あとにびらん面ができます。このとき表皮形成がわるくて治りにくく、ものに触れると痛みがあります。すれるとびらん面がひろがってきます。少数の水疱の発生に始まりますが、しだいに全身にひろがっていきます。また、口腔(こうくう)粘膜に始まるものがあり、“アフタ”やほかの口腔粘膜の病気とまちがえられます。


■増殖性天疱瘡
 これは尋常性天疱瘡の亜型で、水疱が破れたあとのびらん面が乳頭状に皮膚増殖をきたして、いぼのように厚くなって悪臭をはなってきます。病変は、皮膚のこすれやすいところ、つまり唇、鼻口部、外陰部、肛門周囲に出てくるのが特徴です。

■落葉状天疱瘡
 水疱が角層に近い表皮の浅いところにできるため、破れやすくて、乾燥した落屑(らくせつ)が全身に目立って、皮膚全体が赤くなっています。落葉状天疱瘡では口腔、そのほかの粘膜はおかされません。

■紅斑性天疱瘡
 これは、落葉状天疱瘡と同じで、皮膚表面に近く水疱ができます。しかも、体幹の正中線を中心にできているので、脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)とか、とびひ(膿痂〈のうか〉疹)とまちがえられることがよくあります。これによって口腔粘膜はおかされることはありません。鼻を中心にほおにかけて蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)を伴っていることがあって、ときに全身性エリテマトーデス重症筋無力症などの自己免疫疾患、胸腺腫を合併していることがあります。

[治療]
 原則として、副腎皮質ステロイドを全身的投与、内服します。免疫抑制薬、血漿交換療法、γグロブリン大量療法なども有効です。多くは入院して治療します。
 天疱瘡は国の難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)に指定され、医療費の公費負担対象になっています。

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