生まれた季節は、アレルギー感作やアレルギーの発症と関連するのか。両者の関連にビタミンDやアレルゲンへの曝露は影響を及ぼすのか―。山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座講師の小島令嗣氏らは、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国出生コホート研究(エコチル調査)」のサブコホート調査において、生まれた季節とレルギーとの関連を検討し、結果をAllergol Int2023; 72: 411-417)に発表。特定のアレルギーが出生季節の影響を受けることが明らかになった。

4,323組の母子が対象

 出生季節と小児期のアレルゲン感作、アレルギー性鼻炎との関係は長く研究されてきたものの、一貫性のある結果は出ていない。また、出生季節とアレルギー性鼻炎との関連にビタミンD欠乏症やアレルゲンへの曝露などが関与することが示唆されているが、これらを包括的に検討した研究は少ない。

 小島氏らは今回、2011年1月〜14年3月に国内15地域の妊婦10万人超とその児を対象に実施したエコチル調査のデータを用い、4,323組の母児について出生季節と2歳時のスギ花粉またはイエダニへの感作、3歳時のアレルギー性鼻炎または花粉症との関連について、ビタミンDレベルおよびアレルゲン曝露の関与を踏まえて検討した。

 2歳時のスギ花粉またはイエダニ(コナヒョウヒダニおよびヤケヒョウヒダニ)感作の有病率はそれぞれ最大2%、10%との報告があることから、血清特異的免疫グロブリン(Ig)E値がそれぞれ上位2パーセンタイルおよび10パーセンタイルを感作と定義した。アレルギー性鼻炎および花粉症に関する情報は、3歳時に母親へのアンケートで得た。

 出生季節は12~2月を冬、3~5月を春、6~8月を夏、9~11月を秋とし、冬生まれを対照群とした。ビタミンDレベルは2歳時に血清25水酸化ビタミンD3濃度を測定した。スギ花粉への曝露は、環境省公式サイトから年間スギ花粉飛散量データを都道府県別に収集し、該当する居住地の小児に割り当てて解析した。イエダニへの曝露は、生後18カ月時に小児用マットレスから粉塵を収集し、イエダニアレルゲンおよびエンドトキシンレベルを測定した。

 潜在的な交絡因子(母親のアレルギー感作、妊娠中の受動喫煙、世帯収入、子供の性別など)を調整したロジスティック回帰分析により、出生季節とスギ花粉およびイエダニ感作、アレルギー性鼻炎および花粉症の発症、ビタミンDレベルやアレゲン曝露との関連について調整オッズ比(aOR)を算出した。3年後のアレルギー有病率は、アレルギー鼻炎は5.0%、花粉症は3.7%だった。

春/夏の出生が花粉症と、夏の出生はイエダニ感作と関連

 解析の結果、春/夏の出生は花粉症との有意な関連が認められた(順にaOR 2.08、95%CI 1.13~3.82、同1.89、1.03~3.47)。また、夏の出生はイエダニ感作との有意な関連が示された(コナヒョウヒダニ:同1.53、1.10~2.15、ヤケヒョウヒダニ:同1.44、1.03~2.01)。

 ビタミンDレベルと花粉症には有意な正の関連性が示された〔欠乏レベル(<20ng/mlL)を対照とした場合の十分レベル(≧30 ng/ml)のaOR 2.01、95% CI 1.20~3.37〕。スギ花粉およびイエダニへの曝露は、それぞれ花粉症およびイエダニ感作と関連していた。

 以上を踏まえ、小島氏らは「春と夏の出生は花粉症と、夏の出生はイエダニ感作と関連していることが示され、ビタミンDとアレルゲンへの曝露を調整後も維持された。これらの関連は、春と夏の出生には花粉への曝露とビタミンD以外の季節特有のメカニズムが関与していることが示唆された」と結論。その上で「予想に反しビタミンDレベルと花粉症が正の相関を示した点については、ビタミンDレベルの季節変動が影響した可能性がある。気象条件や乳幼児期の呼吸器感染など潜在的な影響について、さらなる研究が必要である」と付言している。

(植松玲奈)