広島市立広島市民病院病院長/広島大学名誉教授の秀道広氏らは、日本人の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者12例を対象にカリクレイン阻害薬ラナデルマブの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相多施設共同非盲検試験の結果をJ Dermatol2023年8月14日オンライン版)に発表した。ラナデルマブ300mgを2週間隔で皮下注射した結果、26週時点で5例(41.7%)がHAEの無発作状態を維持しており、52週時点では1カ月当たりの平均発作回数が治療前と比べて74%減少した。なお、ラナデルマブは昨年(2022年)3月にHAE急性発作の発症抑制を効能・効果として承認されている(関連記事「遺伝性血管性浮腫、長期予防薬でQOL改善へ」)。

半数が無発作を5カ月間維持、2例は52週間維持

 この第Ⅲ相試験では、国内10施設で12歳以上の日本人HAE患者12例(平均年齢41.9±12.4歳、女性9例)を登録。ラナデルマブ300mgを2週間隔で皮下注射し52週間治療した。治療期間の後半26週間(第183~364日)では、連続26週間にわたり症状が安定していた場合に4週間隔投与への変更を認め、適切な訓練を受けた患者または介護者による自己注射も可能とした。

 解析の結果、有効性の主要評価項目とした、治療期間の前半26週間(第0~182日)を通じてHAE無発作状態を維持した患者は5例(41.7%)だった。

 また、無発作状態を5カ月間維持したのは6例(50%)、52週間の治療期間全体にわたって維持したのは2例(16.7%)だった。

投与間隔延長でも効果を維持

 1カ月当たりの平均発作回数(発作率)は、治療前の3.8±2.4回と比べて26週時点で1.2±2.5回と77.1±29.2%減少し、52週時点では1.2±2.6回と74.0%±35.4%減少した。

 ラナデルマブの半減期(14日)に基づく安定期間(治療期間の前半で第70~182日、全体で第70~364日)に限定した解析では、発作率の減少幅がさらに大きかった(順に80.3%、74.4%)。

 後半26週間に投与間隔を変更した患者は4例(33.3%)で、変更後も発作率が低い状態を維持していた(2週間隔投与時0.1±0.2回、4週間隔投与時0.1±0.2回)。

自己注射による有害事象の増加なし

 治療中に発現した有害事象(TEAE)による死亡または投与中止、ラナデルマブ投与に関連する重症または重篤なTEAE、抗薬物抗体(ADA)陽性例はなかった。最も発現率が高かったTEAEは注射部位反応(6例37件)で、大部分は軽度だった。

 また、後半26週間に7例(58.3%)が計59回のラナデルマブ自己注射を行っていたが、自己注射によるTEAEの増加は認められなかった。

 以上の結果を踏まえ、秀氏らは「日本人HAE患者の発作予防におけるラナデルマブの有効性が示された。日本人HAE患者におけるラナデルマブの有効性と安全性は、国際第Ⅲ相試験HELPおよびHELP OLEの結果と同等だった」と結論している。

太田敦子