果物にうつ病予防効果
~多く食べる人でリスク低下(国立精神・神経医療研究センターなど)~
果物をたくさん食べている人はうつ病になりにくいことが、国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市)、国立がん研究センター(同中央区)などでつくるグループの研究で明らかになった。
果物の摂取量が多いほど、うつ病になりにくい
◇フラボノイドが影響か
食事や栄養とうつ病との関係について、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部の成田瑞室長は「主に欧米で行われた研究から、野菜や果物を多く取ることがうつ病に予防的に働くとのデータが示されています」と説明する。
果物に関しては、「果物に含まれるフラボノイドというポリフェノールの一種が、うつ病予防に有効だとする見方が強いです。フラボノイドは、うつ病の発症メカニズムとされる、脳由来の神経栄養因子の減少や酸化ストレス、神経の炎症を抑える可能性があると推測されています」。
◇ジュースにせず
日本を含むアジアの住民に関しては、果物の摂取がうつ病に及ぼす影響の研究は、まだほとんど行われていない。そこで成田室長らは、長野県南佐久郡に住む、1990年時点で40~69歳の男女のうち、95年と2000年の食事調査アンケートに回答した、かつ14~15年実施の「こころの検診」に参加した1204人のデータを統計的に解析した。このうち、93人がうつ病(認知症を合併している人を除く)と診断された。
野菜、果物全般、フラボノイドが豊富な果物(リンゴ、ナシ、ミカンなど)それぞれの摂取量によって五つのグループに分け、摂取量が最も少ない人を基準にして、他のグループのうつ病の発症リスクとの関連を調べた。
その結果、果物とフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、発症リスクが低いことが分かった。野菜の摂取量との有意な関連は見られなかった。野菜や果物に含まれるビタミンCなどの個々の栄養素と発症リスクについても、統計的な関連はなかった。
ただし、フラボノイドの有効性については、「果物全体とフラボノイドの豊富な果物の両者で予防効果があったことから、うつ病になりにくくなるのは、フラボノイドというより、果物全般が持つ抗酸化作用などによるものと考えます」との見方を示した。
成田室長は「意識して果物を摂取すると、心の健康に良いと思います。ジュースでは抗酸化作用が低下するため、そのまま果物を食べることを勧めます」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/08/31 05:00)
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