病院勤務医の2割は、時間外労働の過労死ラインとされる月平均80時間に相当する年960時間を超えていると推計されたことが、厚生労働省の研究班(代表・小池創一自治医科大地域医療学センター教授)の調査で分かった。一方、常態化していた長時間労働が働き方改革で是正されつつあることも確認された。
 調査は昨年7月に全国の病院や診療所などを対象に行った。5424施設から医師1万9879人分の回答を得て、このうち病院常勤医1万1466人の1週間の勤務状況などを分析した。
 それによると、1週間の法定労働時間40時間を超えて、60時間以上勤務し、時間外労働が「年960時間超」と考えられる割合は20.4%だった。診療科別だと、脳神経外科が36.6%と最も多く、救急科32.3%、外科29.7%、産婦人科28.0%が続いた。
 前回2019年調査と比べ、長時間労働の割合は減少した。週「40時間未満」は13.7%から22.5%に、「40時間以上、50時間未満」は22.3%から32.7%に増えたのに対し、「60時間以上、70時間未満」は18.9%から12.1%に、「70時間以上、80時間未満」も10.4%から5.4%に減った。
 負担軽減策として、患者や家族への病状説明を診療時間内に限定する取り組みは5割を超える施設で実施済みだった。1年前と比べ有給休暇を取得しやすくなったと回答した医師は3割いた。
 残業時間に上限規制を設けた働き方改革関連法は19年に施行されたが、勤務の特殊性などを考慮して5年間猶予された医師への適用は24年度に迫っている。
 小池教授は「改革が一定程度進む一方、診療科間の差も明らかになり、病院や患者にお願いしてやらなければならないこともある」と指摘。「勤務時間は短くなったが、新しい医療の研究や若手教育の時間も減っている。医療の質を保ちながら、どうやって働き方改革を進めていくのかが難しく、課題だ」と話した。 (C)時事通信社