インドネシア・Universitas Airlangga/Dr. Soetomo General Academic HospitalのCita R. S. Prakoeswa氏らは、同国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応する14カ所の指定病院の医療従事者845例を対象に、医療用手袋の使用と職業性皮膚炎に関する質問票を用いた横断的研究を実施。その結果、2割弱がCOVID-19パンデミック下で手袋誘発性の手の皮膚炎を経験しており、特に手袋の使用時間が1日2時間以上の者、アトピー性皮膚炎または手の皮膚炎の既往歴を有する者でリスクが高かったとDermatol Res Pract2023; 6600382)に発表した。

主な症状は瘙痒、乾燥、発赤、好発部位は手掌

 COVID-19パンデミック下の医療施設では、感染拡大防止のために医療用手袋を含む個人用防護具(PPE)の使用や頻回の手指衛生が義務付けられたが、これらは職業性皮膚障害を引き起こす可能性があり、実際に世界の多くの施設から医療従事者の皮膚障害が報告された。

 そこでPrakoeswa氏らは、インドネシアの14カ所のCOVID-19指定病院でPPEを使用しCOVID-19患者のケアを行った医療従事者845例(女性67.57%、医師55.15%、看護師41.42%)に対し、質問票による調査を実施。年齢、性、就業状況、手袋使用に関連する皮膚障害、手袋の使用状況、手指衛生の頻度、既往歴に関するデータを収集した。

 解析の結果、156例(18.46%)がCOVID-19パンデミック下で手袋誘発性の手の皮膚炎を発症していた。発症者の内訳は、女性が81.41%、最多年齢層は25~29歳(38.46%)で、職業別では医師および看護師が各47.43%と大部分を占めた。

 最も発現率が高かった症状は皮膚の瘙痒感および乾燥(各44.23%)、次いで発赤(42.94%)の順だった。症状の最好発部位は手掌(48.72%)、次いで手背(28.85%)、手首(14.10%)の順だった。

 皮膚症状を引き起こした手袋の種類は、天然ゴムまたはラテックス製手袋が45.51%と最も多く、職場で使用可能な全種類の手袋との回答も20.51%に上った。

発症者の6割近くは治療せず、適切な教育を

 手袋誘発性の手の皮膚炎と手袋使用との間には有意な関連が認められ〔オッズ比(OR)2.922、95%CI 1.536~5.556、P=0.001〕、特に1日2時間以上の手袋使用と有意な関連があった(同1.522、1.074~2.157、P=0.018)。

 また、手袋誘発性の手の皮膚炎は、アトピー性皮膚炎の既往歴を有する者(7.69%、OR 4.018、95%CI 1.820~8.869、P=0.001)および手の皮膚炎の既往歴を有する者(9.62%、同8.038、3.449~18.732、P<0.001)で強い関連が見られた。

 以上を踏まえ、Prakoeswa氏らは「医療従事者における手袋誘発性の手の皮膚炎を予防し安全な労働環境を提供するために、医療用手袋の使用については慎重に考慮すべきである。使用時間が1日2時間以上の者や、アトピー性皮膚炎または手の皮膚炎の既往歴を有する者はリスクが高く、特別に配慮すべきである」と結論している。また、発症者の57.69%が皮膚症状に対する治療を全く行っておらず、保湿剤の使用が32.05%にとどまっていたことから、「皮膚炎の管理に関する適切な教育を行うべきである」と付言している。

(太田敦子)