カナダ・University of TorontoのChristopher J.D. Wallis氏らは、手術を担当するのが女性外科医か男性外科医かで、患者の長期的な臨床転帰に差があるかを検討するため、手術を受けた患者100万例超を対象に後ろ向きコホート研究を実施。外科医の性別で患者の臨床転帰に差があったとJAMA Surg2023年8月30日オンライン版)に報告した。

術後90日および1年の長期追跡の転帰を比較

 外科医の性別で診療やコミュニケーションに違いが生じ、患者の周術期転帰に影響を与える可能性がある。これまでに、女性外科医が担当した患者は男性外科医が担当した患者に比べて術後30日の転帰が良好であったことなどが報告されている。しかし、長期的に追跡した場合に外科医の性別により臨床転帰に差が生じるかは不明である。

 そこでWallis氏らは、外科医の性別が患者の長期的な臨床転帰に関連するかどうかを検討する後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、2007年1月1日~19年12月31日に、25種類の待機的手術または緊急手術のいずれかを受けたカナダ・オンタリオ州の成人患者116万5,711例(平均年齢59.0±17.3歳、女性61.9%)。18歳未満の患者、オンタリオ州以外の居住者、手術前に死亡した患者、手術手技が不明な患者などは除外した。

 主要評価項目は術後90日および1年における死亡、再入院、合併症の複合、副次評価項目は主要評価項目の各項目とした。臨床転帰は、患者、手技、外科医、麻酔科医、施設レベルを調整し、手術手技のレベルでクラスタリングした一般化推定方程式を用いて、女性外科医の患者と男性外科医の患者で比較した。

「組織は女性医師を支援し、治療成績向上の方法を学ぶべき」

 解析対象116万5,711例のうち、15万1,054例が女性外科医による手術を、101万4,657例が男性外科医による手術を受けた。

 全体として、1つ以上の転帰不良を示した患者は術後90日で14.3%、術後1年で25.0%だった。死亡した患者は術後90日以内で2.0%、術後1年以内で4.3%だった。

 解析の結果、主要評価項目(死亡、再入院、合併症の複合)の発生率は、術後90日〔男性外科医13.9% vs. 女性外科医12.5%、調整後オッズ比(aOR)1.08、95%CI 1.03〜1.13〕および術後1年(同25.0% vs. 20.7%、1.06、1.01〜1.12)のいずれにおいても、女性外科医が担当した患者に比べ男性外科医が担当した患者で高かった。

 死亡率についても同様に、術後90日(男性外科医0.8% vs. 女性外科医0.5%、aOR 1.25、95%CI 1.12〜1.39)および術後1年(同2.4% vs. 1.6%、1.24、1.13〜1.36)のいずれでも、男性外科医が担当した患者で高かった。

 今回の結果を踏まえ、Wallis氏らは「男性外科医が治療した患者に比べ、女性外科医が治療した患者は術後90日および1年の死亡を含む有害な転帰の発生率が低かった」と結論。「男性医師の治療を受けた患者に比べ、女性医師の治療を受けた患者の転帰は良好であるという報告が増えつつある。患者に最善の医療を提供するために、組織は女性医師を支援し、彼女たちがどのように治療成績の向上を達成しているかを学ぶべきである」と述べている。

(今手麻衣)