東京慈恵会医科大学眼科学講座の佐野圭氏らは、労災病院グループ34施設による入院患者病職歴調査(ICOD-R)のデータを用い、日本人における飲酒習慣と緑内障との関連を検討する症例対照研究を実施。その結果、飲酒頻度および飲酒量と緑内障リスクとの間に用量反応関係が認められ、特に男性で顕著だったとJ Glaucoma2023年9月26日オンライン版)に発表した。

「週に数日」「1日2杯以下」でリスク上昇

 解析対象は、2015~19年に全国の労災病院34施設に入院した40歳以上の緑内障患者群と、年齢、性、入院年度、入院施設でマッチングした眼科病歴がない対照群(各群3,207例、平均年齢73.7歳、男性50.4%)。

 飲酒習慣は、①飲酒頻度〔飲まない(非飲酒者)、以前は飲んでいた(過去飲酒者)、週に数日、ほぼ毎日〕、②純アルコール量10gを1杯と換算した1日の平均飲酒量(飲まない、2杯未満、2杯超4杯未満、4杯超)、③1日の平均飲酒量に飲酒年数を乗算した生涯飲酒量(drink-years:飲まない、40未満、40超60未満、60超90未満、90超)-の3種類を検討した。

 年齢、性、入院年度、入院施設、喫煙歴、生活習慣関連の併存疾患(高血圧糖尿病、脂質異常症、心血管疾患、肥満)を調整後の条件付きロジスティック回帰モデルによる解析の結果、緑内障との関連が認められた飲酒頻度は「週に数日」〔非飲酒者に対する緑内障の調整後オッズ比(aOR)1.19、95%CI 1.03~1.38〕、「ほぼ毎日」(同1.41、1.18~1.67)で、飲酒頻度が高くなるほど関連が強かった(傾向のP<0.0001)。

 緑内障との関連が認められた1日の平均飲酒量は「2杯未満」(aOR 1.17、95%CI 1.03~1.32)で、2杯超の飲酒量との有意な関連は認められなかった(傾向のP=0.09)。

 緑内障との関連が認められた生涯飲酒量(drink-years)は「60超90未満」(aOR 1.23、95%CI 1.01~1.49)、「90超」(同1.24、1.06~1.45)で、生涯飲酒量が多くなるほど関連が強かった(傾向のP=0.003)。

女性では飲酒頻度・量との関連を認めず

 また、飲酒習慣に大きな性差が認められたため、男女別の解析も行った。

 男性では、飲酒頻度の「週に数日」と「ほぼ毎日」、1日の平均飲酒量の「2杯未満」と「2杯超4杯未満」、生涯飲酒量(drink-years)の「60超90未満」と「90超」で緑内障との関連が認められた。しかし、女性では飲酒頻度、1日の平均飲酒量、生涯飲酒量のいずれも緑内障との関連が認められなかった。

 以上を踏まえ、佐野氏らは「飲酒の頻度および量がともに緑内障に関連していた」と結論。「飲酒習慣が緑内障の発症および進行に影響を及ぼすメカニズムについて、さらなる研究が必要である」としている。

 また、女性で有意な関連が認められなかった理由については、飲酒による眼圧上昇に性差がある可能性や、飲酒のペース、アルコールの種類などに性差が報告されている点を指摘した上で、「今後の研究で詳細に検討する必要がある」と付言している。

(太田敦子)