【杭州時事】中国・杭州でのアジア大会は、新型コロナウイルスの流行を受けた1年の延期を経て23日に開幕する。感染拡大を徹底して抑え込む厳格な「ゼロコロナ」政策下で行われた2022年2月の北京冬季五輪と異なり、関連の規制を全て撤廃。習近平政権はコロナ禍の「克服」を世界にアピールしたい考えだ。
 杭州の空港には連日、日本を含む選手団や関係者が続々と到着。マスクをしていない人の姿が目立ち、案内のボランティアがハイタッチで迎える場面もあった。地元の大学生だというボランティアは、「コロナの規制は全てなくなりました」と誇らしげに語った。
 杭州市の陳衛強副市長は6月の記者会見で、延期に伴う課題を克服し、「『後遺症』は残っていない」と強調。開幕を1カ月後に控えた8月には「隔離も濃厚接触者の判定も、強制的なPCR検査もない」と胸を張った。
 ゼロコロナ政策下で迎えた北京冬季五輪は、一般の観客を入れず、選手・関係者と外部の接触を断つ「バブル方式」での開催となった。白い防護服姿の係員が各地に配置され、選手らはバブル内から一切出られず、連日のPCR検査を義務付けられた。
 習政権は昨年末、ゼロコロナ政策を急激に転換。人口14億人のうち11億人以上が感染したとも言われる爆発的流行を経て、今年1月には入国時の隔離措置を完全に撤廃し、約3年続いた同政策は事実上終了した。アジア大会開幕を控えた8月30日には入国時のPCR検査陰性証明が不要となり、全ての規制がなくなった。
 アジア大会の開催地となる浙江省は、習国家主席がトップを務めたゆかりの地。習氏は、当初昨年9月に開催予定だったアジア大会を五輪に続いて成功させて権威を高め、同10月の共産党大会で総書記3期目入りを果たす段取りを描いていた。権威に傷が付くことを回避するため、アジア大会延期を判断したとみられている。
 高志丹・国家体育総局長は12日、アジア大会について、党大会後に開催される影響力の最も大きい大会だと指摘。「わが国の経済社会発展の成果をアジアと全世界に示す場だ」と自国選手に訓示した。 (C)時事通信社