米・Harvard Medical SchoolのMarcus V. Ortega氏らは、過去5年間の米国医師における燃え尽き症候群の有病率を明らかにするため、医師1,300例超を対象に調査研究を実施。その結果、全体として燃え尽き症候群の有病率は高まっており、特に女性医師やプライマリケア医、経験の浅い医師で顕著だったとJAMA Netw Open2023; 6: e2336745)に報告した。

2017、19、21年の3回、現役臨床医を対象に調査

 米国では医師の燃え尽き症候群の増加が報告されているが、調査方法に多くの限界があり、実情は明らかでない。そこでOrtega氏らは、過去5年間の米国医師における燃え尽き症候群の有病率を明らかにするため、2017、19、21年に調査研究を実施した。

 対象は、米・マサチューセッツ総合病院医師組合(MGPO)に所属する現役の臨床医1,373例。米国世論調査協会(AAPOR)のガイドラインに準拠したオンライン調査票を用いて、①医師のキャリアと報酬に対する満足度、②Maslach Burnout Inventory(MBI)とUtrecht Work Engagement Scale(UWES)を用いて評価した医師の幸福度、③医師に対する管理業務の負荷、④リーダーシップと多様性―の4領域について調査した。

 主要評価項目は、MBIで評価した医師の燃え尽き症候群とした。回答者は22項目についてそれぞれ0(全くない)〜6(毎日ある)の7段階で評価し、疲弊感(Exhaustion)、シニシズム(Cynicism)、自己効力感の低下(Reduced Personal Efficacy)の3つの下位尺度のうち、2つで高得点(順に3.2、2.6、3.8以上)の場合に燃え尽き症候群と定義した。

 解析には、データの性質を考慮して2段階の統計モデルを使用し、2値アウトカム(燃え尽き症候群の有無)には階層ロジスティックモデルを、連続アウトカム(燃え尽き症候群の程度)には一般化線形モデルを用いた。

医療制度の潜在的脅威、早急な解決策が必要

 検討の結果、回答率は2017年が93.0%、2019年が93.0%、2021年が92.0%だった。3回の調査全てに参加した医師は1,373例(2017年のコホートの72.9%)で、そのうち690例(50.3%)が男性、921例(67.1%)が白人で、1,189例(86.6%)が非ヒスパニック系だった。経験年数は11〜20年が478例(34.8%)で最も多かった。

 燃え尽き症候群の有病率は、2017年の44.4%(610例)から2019年には41.9%(575例)に低下し(P = 0.18)、2021年には50.4%(692例)に上昇した(P<0.001)。

 また、性、専門分野、経験年数が燃え尽き症候群と有意に関連。燃え尽き症候群の有病率は女性医師(OR 1.47、95%CI 1.02〜2.12、vs. 男性医師)、プライマリケア医〔OR 2.82、95%CI 1.76〜4.50、vs. 内科医(腎臓内科、呼吸器科、リウマチ科、アレルギー免疫科、循環器内科、内分泌内科、消化器内科、神経内科、感染症内科、小児科ほか)〕で高かった。一方、経験年数が11年以上の医師では低かった(OR 0.21~0.73、vs. 経験年数10年以下)。

 3回の調査を通じて高度の燃え尽き症候群を1回以上経験した群と比べ、1回も経験しなかった群では医師としての経験年数が長く(17.5年 vs. 14年、P<0.001)、管理業務に費やす時間が短く(週平均24.0% vs. 31.0%、P<0.001)、報酬に満足していた(47.0% vs. 26.2%、P<0.001)。

 今回の研究について、Ortega氏らは「米国において医師の燃え尽き症候群が増加していることが示された。米国の医療制度における潜在的脅威となるため、早急な解決策が求められる」と結論している。

(今手麻衣)