近年、医学部人気が高まっており、少子化にもかかわらず3年連続で志願者数が増加している。この傾向は来年(2024年)度入試も続くと考えられるが、地域枠の拡大などに伴う地方大学の医学部人気や2025年度に始まる新課程共通テストを前に志望校の選択は安全志向が高まると予想される。医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括の可児良友氏は10月17日に東京都で開いたプレスセミナーで、今年度の結果を踏まえ来年度の医学部入試の動向について解説した。

2023年度は平均得点率が4%上昇、個別試験で競争激化

 今年度の共通テストは、昨年度に理系科目で大幅に平均点が下がったことを受けて入試問題の見直しにより、特に数学2科目の平均点が約20点ずつ上昇。全体得点率が4%上昇するなど易化した。これを受けて、医学部の出願ラインである7科目理系型の得点率が80%以上の受験者数が前年比196%と倍増し、個別試験の競争が激化する結果となった()。

図. 共通テストの得点別度数分布(過年度対比)

49795_fig01.jpg

(プレスセミナー資料)

 多くの理系受験生が選択に迷う物理と化学の平均点は、それぞれ63.39点、48.68点と大きな開きがあり、昨年度に続き物理を選択した受験者で有利な傾向が見られた。

医学部人気は継続、試験は難化予想

 今年度の河合塾第2回全統共通テスト模試によると、国公立大学医学部の来年度前期日程における全志望者数は前年比105%の増加。現役生(102%)、女性(104%)も同様で、医学部人気が続くことが予想されるという。私立大学医学部における全志望者数は前年比109%の増加。一般方式は108%、共通テスト利用方式は118%となっており、後者での出願者の増加が見込まれる。

 個別試験については、共通テスト同様に大学入試改革を踏まえて思考力、判断力、表現力を重視した出題となる。可児氏は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大期は出題範囲を一部縮小するケースが見られたが、学校生活が落ち着いたことで入試改革が本格化すると考えられる」と予想。記述式では、複数の素材を編集し立論・表現する能力を評価する高度な問題が出題される可能性があるという。

 また、配点に対する面接・小論文の比重が高まっている。来年度の前期日程において筑波大学は学科試験(英語・数学・理科)の合計が900点であるのに対し、面接・適性試験の配点は500点と高い。面接試験は個人面接、プレゼンテーション、集団討論、MMI(特定のテーマについての個人面接を複数回、面接官およびテーマを変えて実施するもの)などさまざまな形式で行われるようになり、主体性やコミュニケーション能力を重視する傾向が強まっているという。

都市部から地方の医学部を目指す流れが加速

 今年度における国公立大医学部の地区別志願者数の前年比は、大都市圏の関東甲信越が100%、近畿が98%だったのに対し、地方は東海が131%、北海道が120%、東北が119%、北陸・中国が111%、九州・沖縄が101%と、四国の81%を除き軒並み増加している。

 これらは、地域枠の割合増加も影響しており、2007年度に173人(2.3%)だった地域枠は2020年度には1,679人(18.2%)まで増員しており(図2)、地域の医師確保のために一般枠を縮小し、地域枠の割合を拡大するケースも増えている。

図. 医師養成数の変化と2023年以降のイメージ

地域枠.png

(厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会資料)

 来年度では、山形大学が地域枠として新規に5人増員した他、信州大学が今年度の25人(地元出身者枠10人、地域枠15人)から35人(長野県地元出身者枠13人、全国募集地域枠22人)に増員。滋賀医科大学では一般枠を29人から26人に削減する一方、地域医療枠を6人から9人に増員した。

 可児氏は「全国募集での地域枠を設ける大学も増えており、私立大学でも奨学金や就学資金制度を用意しているため、都市部の受験生が志願しやすくなっている。来年度はさらに、都市部から地方の医学部を目指す受験生が増える可能性がある」との考えを示した。

2025年度は経過措置でチャンスも

 2025年度に始まる新課程共通テストでは、『情報』科目が追加される他、国語では近代以降の文章問題数が増え、試験時間も90分(10分増加)に変更。数学では『旧数学Ⅱ・旧数学B』に当たる科目が『数学Ⅱ・数学B・数学C』となり、数学B・数学Cは数列、統計的な推測(数学B)、ベクトル、平面上の曲線と複素数平面(数学C)のうち3項目を選択することになる。地理歴史、公民も出題科目が大きく改編される。

 そのため、最後の旧課程での共通テストとなる来年度は、多くの受験生が浪人を避けて志望校選択は安全志向になる可能性が高いという。ただし、浪人生に対する経過措置として2025年度は数学・地歴公民・情報は旧課程履修者用の問題が用意される。

 可児氏は「科目によっては新課程より範囲が狭く、浪人生に有利に働く場合もある。保守的にならず、チャレンジすべき」と強調した。

国公立は2段階選抜の倍率や隔年現象、私立は試験日の重複が影響

 国公立大学では、募集定員を志願者数が大幅に上回った場合、前期試験や後期試験の前に共通テストの成績により受験者を選抜する第1段階選抜が行われる。今年度の大分大学では第2段階選抜の選抜基準である195人(定員の約3倍)に対し、志願者が395人と大幅に超過し200人が個別試験に進めなかった。

 こうしたことから、第2段階選抜の倍率変更は受験動向に大きな影響を及ぼす可能性がある。今年度と比べて来年度は、東北大学(前期)は約3倍から約3.5倍に、鹿児島大学(後期)は約8倍から約10倍に緩和したため志願者の増加が予想される。一方、岐阜大学(前期)は約9倍から約3倍に引き締めたため、志願者の減少が予想されるという。

 また、例年志願者が大幅に増加した翌年は減少し、減少した翌年は増えるという「隔年現象」も見られることから、各大学の志願者数の変動状況を確認することが重要だという。

 私立大学では、試験日の重複が志願者数に影響を及ぼす。今年度と比べ、来年度は一次試験日の重なりが少ないため、併願できるチャンスが広がっている。

 可児氏は「志願者動向には試験科目・配点の変更や募集人員の増減、学費の変更などさまざまな要素が影響する。こうした点にも注意を払いつつ、合格を目指してほしい」と呼びかけた。

(植松玲奈)