抗インターロイキン(IL)-4/13受容体抗体デュピルマブは、中等度~重度のアトピー性皮膚炎(AD)に有効だが、ADに対する使用に伴う皮膚リンパ系の障害(lymphoid reaction;LR)が報告されている。オランダ・University Medical Center Utrecht(UMCU)のCeleste M. Boesjes氏らは、デュピルマブによる治療中に皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)が疑われたAD患者14例の臨床的および病理組織学的特徴を検討する後ろ向き症例集積研究を実施し、結果をJAMA Dermatol2023年10月18日オンライン版)に報告。デュピルマブはCTCLに似た皮膚LRを惹起しうるが、病理組織学的な特徴は異なり、可逆性かつ良性であると指摘した。

14例中3例は治療前にCTCL発症

 Boesjes氏らは、2017年10月~22年7月にUMCUでデュピルマブによる治療を受けた成人AD患者530例のうち、治療中に臨床的なCTCLが疑われた14例(2.6%)について、臨床的特徴を検討するとともに、治療前・中・後の皮膚生検標本の病理組織学的な再評価を行った。

 14例とも当初はデュピルマブが奏効するかに見えたが、治療中に症状の悪化が認められた。うち3例(530例の0.6%)は、デュピルマブ治療前に既にCTCLの一種である菌状息肉症(MF)であったものが、ADと誤診されていたことが、再評価により判明した。3例とも50歳代の女性で、デュピルマブ開始から臨床的増悪までの期間は中央値4.0カ月〔四分位範囲(IQR)2.0~5.0カ月〕、誤診判明までの期間は最長14年だった。

11例の症状はCTCL似だが病理組織学的には相違

 残る11例(2.1%)は、デュピルマブ治療開始後に初めてCTCL様の症状悪化が見られたもので、年齢中央値52歳(IQR 31~69歳)、男性8例、女性3例、デュピルマブ開始から臨床的増悪までの期間は中央値4.0カ月(IQR 1.4~10.0カ月)だった。

 これら11例の症状は、瘙痒の悪化、灼熱感、紅斑性丘疹を伴うなどCTCLに似ていたが、病理組織学的には異なっていて、表皮上層に濃染性の小リンパ球が散在性に分布し、CD4/CD8比の調節不全とCD30の過剰発現が見られる一方、CD2/CD3/CD5の欠損はなかった。これらから、最終的にデュピルマブ関連のLRと診断された。

リンパ系障害の特徴を把握し、発現すれば投薬中止すべき

 11例の一部は、デュピルマブ開始後に、通常のAD再燃時の皮膚症状と異なる灼熱感や痛みが新たに出現したと訴えていた。11例とも、デュピルマブ中止により臨床的・組織学的に改善した。

 これらの結果を基に、Boesjes氏らは「デュピルマブ治療は、CTCLに似るが病理組織学的には異なるリンパ系障害を惹起しうる」と結論。このリンパ系障害は良性で可逆的なものである可能性が高いが、「臨床的・病理組織学的な把握は重要であり、障害が見られた患者ではデュピルマブの中止が推奨される」と指摘している。

(小路浩史)